阪神からポスティング申請を利用してアスレチックスに入団した藤浪晋太郎投手(28)が21日、甲子園で移籍会見に臨んだ。

途中でチームメートからサプライズ動画メッセージが届くと、感極まる場面も。10年間苦楽を共にした聖地で「阪神タイガースの藤浪晋太郎で良かった」と感謝。メジャー1年目の先発ローテ争いへ、はい上がる決意を言葉に変えた。

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藤浪は「お別れ会見」を終えた数分後、照れくさそうに目線を下げた。

「なんか、引退するみたいですね。皆さんがいたからアレですけど、1人やったら多分、泣いていたと思います」

最後は感極まった事実をあえて冗談めかした。

アスレチックス移籍が決まり、日本時間18日にオークランド市内で会見。帰国直後に中2日で聖地を訪れると、サプライズプレゼントが待っていた。

晴天の下、バックスクリーン上の大型ビジョンに次々に仲間が登場する。親交の深い岩崎に梅野、同学年同期入団の北條…。「最高のチームメート」発のメッセージ動画6分41秒を目に焼きつけながら、緩む涙腺と必死で闘った。

「自分は会見させてもらえるような選手じゃない。チームにすごい貢献できたわけでもないのに…。すごく感動しています」

感謝と決意。2つの感情が力強く交錯した。

タイガースに旅立ちを告げた1日。甲子園の芝生を1歩1歩かみしめた。大阪桐蔭時代に春夏連覇を達成。阪神入団後は高卒1年目から3年連続2桁勝利をあげた後、長年にわたって制球難に苦しんだ。誰よりも大歓声を浴び、誰よりも罵声を浴び、誰よりも強くなろうとあがいた場所だ。

「いい思い出も悪い思い出もたくさんあるけど、ものすごくいい経験をさせてもらった。阪神タイガースの藤浪晋太郎でしか経験できなかったこともたくさんあった。阪神タイガースの藤浪晋太郎で良かった」

「きれいごと」ではない。それが偽らざる本音だ。

今後は就労ビザを取得でき次第、太平洋を渡る。バッテリー組のアリゾナキャンプ初日は現地時間の2月15日。先発ローテ入りを懸けた仁義なき戦いがいよいよ幕を開ける。

「皆さん、うまくいくところ、うまくいってないところ、人生の中でたくさんあると思う。人間、誰しもいい時ばかりではない。ここ数年パッとしなかった藤浪でも『あぁ頑張ってるな』と、ちょっと自分と重ねつつ見ていただければ」

自分だけのためではない。支えてくれた人たちのために、誰がために。頂上めがけて、「FUJI」がはい上がる。【佐井陽介】

〇…藤浪はあらためて将来的な阪神復帰に前向きな考えを明かした。「またいつか甲子園で」の問いに「引き際がどうなるか分からないけど、いずれ投げさせてもらえる機会をいただけるのであれば投げたい」ときっぱり。「活躍して日本に帰ってこれればベスト。もしケガで野球ができなくなっても、向こうで学んだことを持って帰ってこれればいい。形はどうなるか分からないけど、何らかの形で恩返しできたらと思っています」と力を込めた。

〇…藤浪はあらためてエンゼルス大谷翔平との夢対決を待ちわびた。同学年で高校時代のライバルは今や大リーグ屈指のスーパースター。メジャー1年目は現地時間3月30日からの開幕カード3試合でいきなり対決する可能性がある。打ち取り方を問われると「どうですかね。なかなか難しいなと思います」と苦笑い。それでも「世界最高の選手ですし、楽しみが一番。いい勝負を見せられれば。頑張って工夫して抑えたい」と目を輝かせた。

〇…藤浪はメジャー関係者を驚かせた英語会見の舞台裏を明かした。3日前、オークランド市内の会見で流ちょうな英語スピーチを決めた右腕。練習の程度を問われると「3、4日ぐらい前から。発音に関しては昔少しやっていたので苦労しなかったですけど、覚えるのに必死で」と照れ笑いした。中学3年時に英検準2級を取得したことでも知られる藤浪だが、あまりの反響に「たくさん連絡が来ました」と目を丸くした。

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