あるぞ、大谷やダルビッシュの胴上げ投手! 侍ジャパン栗山英樹監督(61)が28日、北海道の生活拠点である栗山町で、町の人たちによる「出陣式」に出席。あらためて、3月のWBCでの世界一奪還を誓った。脳裏には、決勝で日本の守護神が相手のラストバッターを抑える瞬間のイメージを刻んだ。

    ◇    ◇    ◇

創建130年以上を数える栗山天満宮の社殿で、世界一を願う祝詞がおごそかに聞こえる。最前列でこうべを垂れる栗山監督は、歓喜の瞬間を思い描いていた。「最後、自分の中ではこのピッチャーが投げてガッツポーズしているイメージは作りながら、神事に向かわせてもらいました。さあ、行くぞ、と」。そう言って、口元を引き締めた。

イメージすることが大事と教えてくれたのは、他でもない、栗山町の人たちだ。11年秋に日本ハムの監督に就き、初めて迎える12年シーズン。その時も開幕前に「出陣式」を開いてくれた。すると、青年会議所の人たちが胴上げをしてくれた。「先に胴上げを。そこからスタートして、その年に(リーグ優勝で)胴上げしてもらった。やっぱり、自分がイメージしたことしか、物事は起こらない。自分がダメだと思ったら、そっちに向かっちゃう」。

WBCも優勝の瞬間を思い描く。マウンドに立っているのは誰か。選び抜いた15投手のうち、チームでも抑えは栗林、大勢、松井裕の3人。湯浅も候補に挙がる。さらに-。1次ラウンドで先発した投手が、大会途中から後ろに回る可能性を問われ「もちろん。みんなが『これやるんですか』というのはゼロじゃない。それを考えるのが仕事」と即答した。第2回大会で開幕投手と胴上げ投手の両方を務めたダルビッシュの再現を示唆した。大谷にも、同じ起用はあり得る。

最後は選手の状態、米国のマウンドとの相性、ルール上の制限がある球数や登板間隔などを加味する。「一応は決めてるけど、多分、後ろの形は流動的になっていく」。一番勝ちやすい形を「選ぶ」だけ。そこに収まる者が、侍ジャパン3大会ぶりの胴上げ投手となる。

出陣式のラストは町の人たちと一緒に「頑張ろう、ニッポン!」と手を突き上げた。みんなに最高の喜びを届ける。そのイメージもできている。【古川真弥】

◆09年WBCのダルビッシュ 先発2試合、救援3試合の通算5試合に登板。まずは開幕の3月5日中国戦で先発し4回を無安打、無失点に抑えて勝利投手。同9日韓国戦の中継ぎを挟み、第2ラウンドの17日韓国戦で先発したが、5回3失点で敗戦投手に。準決勝、決勝は抑えで、準決勝の米国戦は5点リードの9回、決勝の韓国戦は1点リードの9回から登板。韓国戦は同点に追い付かれるも、延長10回にイチローの適時打で勝ち越し。10回裏を0点に抑え、開幕勝利のダルビッシュが決勝でも白星を挙げ胴上げ投手となった。

◆侍ジャパンの予想投手起用 先発は4人。初戦の中国戦は大谷、2戦目の韓国戦はダルビッシュの先発が有力となっている。チェコ戦は佐々木朗、オーストラリア戦は山本が先発か。負ければ終わりの準々決勝の先発は中6日で大谷、あるいは中5日のダルビッシュ、さらに両投手をつぎ込む手も考えられる。第2先発には戸郷、今永、高橋宏、宮城、高橋奎らが控える。伊藤はタイブレークも含め、走者がいる場面でも。左のリリーフには松井裕。宇田川は三振が取れるリリーフ。大勢、栗林、湯浅は抑えも含めた終盤要員だ。

○…侍ジャパンのキャプテンについて、栗山監督は未定とした。昨年11月の強化試合から置いていないのは「ベテラン選手と話しても『必要ない』という意見が多かった。選手が、そう思うなら」が理由。ただ、その後、代表経験者からキャプテンを置くメリットも聞いた。「もう1回、選手たちと話します。俺はキャプテンがいなくても、言うべきことを言って欲しい。年上でも、年下でも」。宮崎合宿までには結論を出す。

○…侍ジャパン栗山監督が1次ラウンドで対戦する中国、チェコの分析を進める。両国は2月末には来日予定で、そこにスタッフを送る。「スコアラーか、アナリストか、コーチか。さすがに合宿が始まったら監督はいた方がいいかな」と冗談も交えつつ話した。韓国やオーストラリアと比べ情報が少ないだけに、格下の相手にも油断はしない。両国の分析を進める。2月17日から宮崎合宿だが、その前に12球団のキャンプ回りは行わない。「データ処理やスコアラーとの話。やることがいっぱいある」と必要な作業に取り組む。

【関連記事】「WBC2023」特集ページ