立命大のプロ注目右腕、谷脇弘起投手(4年=那賀)が意地の1失点完投勝ちを演じた。大学で9回を投げ切ったのは初めてだ。

5回まで無安打無得点の快調ペース。バントで初安打された6回は1死満塁にピンチが広がったが、最速147キロの直球で押しまくり、ホームを守った。

「無安打は気にしていなかった。京大は1点で流れに乗ってくるチームなので、走者を出してから踏ん張れたのがよかった」とポイントの場面を振り返った。

投球数が増えてきた8回、得意のスライダーを投げる際に力を込める右手親指の腹にマメができた。それでも、最終9回は1点を失ったあと、親指の皮が完全にめくれた状態でスライダーを連投。最後の打者を空振り三振にしとめた。

高校3年の夏は和歌山大会決勝で智弁和歌山に敗れ、甲子園に1歩届かなかった。「こうして大学で(リーグ戦の)1戦目に投げさせてもらえている。野球人としてうれしいし、楽しいです」と甲子園のマウンドを満喫した。

今年の関西大学球界を代表する2人の右腕が、甲子園でそろって初完投した。直前の試合で同大・真野凜風(りんか)投手(4年=天理)が1失点完投で近大打線を封じていた。2人は昨年の大学日本代表候補合宿でも一緒だった間柄。球場入りの入れ替わりの時に会話をした谷脇は「自分とタイプも似ている。負けられない。燃えるものがありました」とライバルに刺激を受けていた。

立命大・後藤昇監督(62)は「自信を持って投げた球をボールと判定されても気持ちを切らさずに投げられた。落ち着いていて、エースらしいマウンドさばきだった」と大黒柱を高く評価した。

DeNA東克樹投手(27)が立命大時代に2度無安打無得点をしている。快挙の期待を抱かせた右腕に、後藤監督は「久しぶりでしたね。東の時と雰囲気が似ているなあと思いながら見ていました」と振り返った。【柏原誠】