サイ・ヤング賞投手が、ハマスタを舞台にファンを魅了した。DeNAトレバー・バウアー投手(32)が、広島5回戦で1軍デビュー。

同球場最多動員となる3万3202人が集まる中、7回を投げ、7安打1失点、毎回の9奪三振で来日初勝利を飾った。マウンドでは投球で、お立ち台では日本の俗語を披露。「バウアー劇場」で喜ばせ、最高の勝利を届けた。

   ◇   ◇   ◇

お立ち台の第一声、バウアーは「アリガトウ!」と日本語で感謝の思いを伝えた。スタンドを見渡しながら「横浜しか勝たん」と絶叫。「勝たん」とは「最高」を意味する俗語で、チームメートから教わったネタを早速披露し、爆笑を誘った。「通訳に変なことを教えてないよね? って確認した上で、言うことになりました」と笑った。

1軍初登板へのあふれる思いから、朝から心と体は興奮? 状態だった。自宅を出る直前に鼻血が出始めたそうで「服につかないようにってことを考えて、いっぱいいっぱいだった」と苦笑。ハマスタ史上最多動員の3万3202人を前に「プレーオフの最後くらいの雰囲気で、ものすごかった」と驚きながら、マウンドでは冷静だった。

捕手の伊藤とともに、事前に配球論をかわし、序盤は速球、カットボールを中心に攻め、中盤以降はカーブ、新球のスプリットチェンジで抑え込んだ。伊藤が「強弱をつけながら」と話したように要所でギアチェンジ。3点リードの7回2死二、三塁ではこの日96球目に最速タイの155キロの速球を投じ、スプリットチェンジで空を切らせた。

自らも楽しみ、周囲を楽しませた。2回2死、レッズ時代の同僚だった広島デビッドソンの先制ソロで初失点。ダイヤモンドを回る時に声を掛け、次の打席の直前には「何てことするんだ?」とジョークを交えると、デビッドソンから「1割8分くらいしか打ってないから」と返答され「180メートルくらい飛んだじゃないか」と突っ込んだ。

レッズ時代の20年にサイ・ヤング賞を獲得。メジャーで5年連続2ケタ勝利を挙げたバリバリのメジャーリーガーは、日本での理想の選手像を思い描いた。「いい選手であるということと、見ていて楽しいと思ってもらえるプレーができる選手になっていきたいです」。25年ぶりの優勝とともに、日本の野球ファンに世界最高峰のピッチングを届ける。【久保賢吾】

◆トレバー・バウアー 1991年1月17日生まれ、米カリフォルニア州出身。カリフォルニア大ロサンゼルス校から11年ドラフト1巡目(全体3位)でダイヤモンドバックス入り。インディアンス(現ガーディアンズ)を経て19年7月にレッズ移籍。コロナ禍のため短縮シーズンになった20年に防御率1・73で最優秀防御率に輝き、サイ・ヤング賞受賞。21年ドジャースへ移籍し、今年1月に契約解除。通算222試合、83勝69敗1セーブ、防御率3・79。185センチ、92キロ。右投げ右打ち。DeNAとは1年契約で、年俸は出来高払いを含め総額300万ドル(約4億500万円)。

▽DeNA斎藤チーフ投手コーチ(バウアーの今後の登板に)「絶対的に中4日とはならないです。他の投手もいますし、運用は監督と相談して、状態を見ながらになると思います」

▽DeNA伊藤(バウアーの投球に)「持ってる球種全てでストライクを取ることに困らないですし、全部のボールを意図して投げていると思います」

▽DeNA桑原(4回に気迫のヘッドスライディングで同点打)「今までチャンスを僕でつぶすシーンばかりだったので、もどかしかったですし、借りは1つずつ必ず返していきます」

▽DeNA楠本(5回に決勝の適時打)「絶対に打ち返してやると。気持ちで打ったヒットだと思います」

▽DeNA三浦監督(バウアーの投球に)「1球1球考えながら、強弱をつけながら、しっかりゲームメークしてくれた。スライダーとか、変化球は打者の反応を見てても、かなりキレがあるなと思った」

【関連記事】DeNAニュース一覧