神がかりの4連勝だ! 阪神が土壇場で試合をひっくり返した。

1点を追う9回2死でシェルドン・ノイジー外野手(28)の放った飛球をヤクルトの右翼手が後逸し、三塁打で出塁。2死一、三塁で佐藤輝明内野手(24)が右翼線に逆転の2点二塁打を決め、劇的勝利となった。貯金を13に増やし、2位DeNAと3ゲーム差に広げた。

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神宮が沸き立つ。佐藤輝が二塁ベース上で両手を広げる。虎党で黄色に染まった左翼スタンドが揺れる。ベンチで仲間がバンザイしている。攻撃が終わるとみんなが迎えてくれた。「うおおお!」。声にならない声で叫ぶ。万雷の「輝コール」にまた、心が揺れた。

「絶対に回ってくると思って準備していました」。こういう場面を待っていた。1点ビハインド。9回2アウトから試合が動いた。3番ノイジーの飛球をヤクルトの右翼並木が後逸し、三塁打で出塁。4番大山が四球でつないだ。

覚悟は決まった。「初球からいこうと」。田口の初球の真っすぐをしばく。右翼線に打球が転がる。一塁走者大山が、長駆ホームイン。土壇場からの逆転2点適時二塁打だ。「最高で~す! めちゃくちゃうれしかったです!」。チーム単独トップ、リーグ2位タイの27打点。勝負強い5番が、ヒーローインタビューで神宮の夜空にさけんだ。

憧れの先輩が太平洋を渡った。レッドソックス吉田正尚。22年1月、自主トレをともにした男の活躍は当然、気になる。時にテレビ中継を目にし、スマホで情報をチェックする。

4月上旬。フェンウェイパーク左翼にそびえる特大フェンス、通称「グリーンモンスター」を越える1発を放ったシーンに震えた。同時に「僕もグリーンモンスターよりいきますよ」と言った。遠く離れていても、刺激を与えてくれる存在に違いない。WBCで世界一をけん引した先輩ばりの勝負強さで試合を決めた。

最後の最後、左の主砲の一撃でひっくり返し、今季3度目の4連勝。岡田監督も「でっかい1勝やなあ。大きいより、もうちょっとデカいなあ。9回2死からやからな。野球てな、最後まで分からんてもう、本当にな。3アウト目まで分からんいうことや」と、この1勝の価値をかみしめる。

先発全員安打で、貯金は今季最多13。2位DeNAに今季最大の3ゲーム差をつけた。18年ぶりの「アレ(=優勝)」へ独走に入ってもおかしくない勢いだ。「乗ってます! 明日も勝ちます!」。ヒーローになった背番号8は力強く約束し、神宮のファンへ手を振った。【中野椋】