輝のお目覚め弾で前半快勝締めだ! 阪神佐藤輝明内野手(24)がチームの連敗を3で止める先制決勝の10号3ランを放ち、2年ぶりの2桁貯金&首位ターンを導いた。

2軍落ちを経て再昇格後も不振が続いていたが、初回に中日涌井から放った47打席ぶりの1発が値千金弾。球団で新人から3年連続2桁弾は田淵幸一、岡田彰布に次ぐ3人目の快挙だ。猛虎のレジェンドに肩を並べた背番号8に後半逆襲の期待が高まる。

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まだ空は青かった。白球が西日に照らされ、甲子園に舞った。そのまま右中間席へ着弾。虎党が、仲間が、誰よりも佐藤輝が、この瞬間を待っていた。「久しぶりだったので、どういう表情で走ったらいいか分からなかった」。照れ笑いを隠し、ダイヤモンドを1周した。

0-0の初回2死一、二塁。中日涌井の147キロをしばき、右中間席に運んだ。6月16日のソフトバンク戦以来、約1カ月47打席ぶりの先制&決勝の3ランは、今季10号。新人から3年連続の2桁弾は田淵、岡田に次ぐ球団3人目の快挙だった。「うれしいけど、もっと積み重ねていけるように」と満足しない。

試合前には先発西純に「母の日を思い出して、ホームラン打ってください」とねだられていた。後輩が前回勝利した「母の日」の5月14日DeNA戦で2発。またも頼もしい先輩の姿を見せた。記録よりも仲間の笑顔がうれしい。

6月下旬には、不振で2シーズンぶりの2軍降格も味わった。再昇格後も打率1割台と苦しむ。状態が上がらない時、岡田監督から「ポイントを前に」と声が飛ぶ。時にコーチを介し、時に記事を目にし、課題を認識してきた。

なぜ、前で捉えることが重要なのか-。「力が伝わりやすいポイントだから」という前提を挙げた上で、感じていることがある。

「引っ張って強い打球がいけば、相手が怖がってくれると思うんです」

豪快なスイングで振り抜けば、ファウルでも凡打でも、相手に恐怖心を植え付けることができる。長距離砲の特権を理解し、試行錯誤した結晶を豪快アーチで示した。

本塁打後の3打席は、いずれも得点圏に走者を置いて凡退。岡田監督は「そんな期待できひんよ。絶対良くなるっていう保証を俺はよう言わん」。4試合ぶりに6番から5番に上げた理由も「相性というかな」と、試合前まで通算6の3の涌井キラーだったから。楽観視はしていない。

とはいえ、背番号8の1発で連敗を3で止め、2年ぶりの2桁貯金&首位ターンを導いたことは間違いない。「前半戦でチームにすごく迷惑かけてしまったので、ここから巻き返していけるように」。若き主砲が、前半戦の最後の最後にきっかけをつかみ、勝負の後半戦へ向かう。【中野椋】

▼阪神が46勝35敗3分け、貯金11の勝率5割6分8厘で前半戦を終えた。既に単独首位ターンは決定していたが、球宴前の最後の試合を勝っての首位ターンは、08年7月29日ヤクルト戦以来、15年ぶり。この年は岡田監督が最大13ゲーム差を覆され、原巨人に優勝をさらわれたが、今年はどうか。

▼佐藤輝が新人年の21年から3年連続の2桁本塁打を達成した。球団では現監督の岡田彰布の12年、田淵幸一の10年に続き3人目。今季の佐藤輝は143試合換算で17本塁打ペースで、入団からの3年間の合計は61本塁打ペースだ。これは田淵の61本(22、21、18)と並び、岡田の52本(18、20、14)を超える勢い。

【動画】阪神佐藤輝明が5番起用に応える先制3ラン!ベンチもスタンドも大いに沸く