“5度目の正直”で鬼門を突破した。阪神伊藤将司投手(27)がプロ入り後では未勝利だった神宮で初勝利を挙げた。

ビジターながら、虎党で黄色く染まった左翼席、三塁席。ヒーローインタビューで神宮初勝利について質問が出ると、ひときわ大きな拍手とともに「おめでとう」と声が上がった。「阪神ファンの方も多く来てくれたので、勝てて良かったです」。6回を3安打1失点で今季4勝目。クールな表情を少し緩ませ、感謝を口にした。

初回に連打を浴びて先制点を許したが、その後は1安打投球。同点の6回には2死一、三塁のピンチを招いたが、4回に中前打を浴びていたオスナを117キロ変化球で中飛に料理した。前回の8日ヤクルト戦(甲子園)では7回途中3失点で3敗目を喫しただけに「2回も3回もやられるわけにはいかなかったので、抑えられて良かった」と踏ん張った。野手陣も粘投に応え、直後の7回に1点を勝ち越し。勝利投手の権利を手に、終盤を救援陣に託した。

過去4試合で0勝2敗と相性の悪かった同球場。以前にも「ロースコアというイメージがない。ロースコアで抑えられたらチャンスはある」と印象を語っていた。この日は上々の1失点投球。セ・リーグ6球団本拠地での白星制覇となり、「うれしいです」と笑った。岡田監督も「2回、3回ぐらいやられているからなあ。ずっとええピッチングしとったけどなあ」と満を持しての白星に納得顔だ。

前日22日の同戦で敗れ、引き分け以下で首位から陥落していた一戦。「流れを変えられたなら良かった」と後半戦初白星をかみしめた。試合後はフェンス際に駆けつけた少年を見つけると足を止め、ウイニングボールをプレゼント。花火も上がった神宮球場で、子どもたちに夢を与える快投となった。【波部俊之介】