敵地横浜での14連敗阻止に、阪神岡田彰布監督(65)の積極采配は欠かせなかった。「久しぶりに競ったゲームの、負けゲームの展開やからな。足の速いの(代走で)いくやろう。そんなん普通やんか。1点差やからのう」。勝利を呼んだずばりタクトにご満悦だ。

1点を追う8回。先頭の森下が内野安打で出塁すると、迷わず代走で俊足の植田を投入した。「そらプレッシャー感じるやろ。森下よりは」。この回から登板した2番手伊勢から3度けん制(1度はプレート外すだけ)を誘った。大山の5球目に植田がスタート。見逃し三振となったが、二盗成功の上、捕手の二塁悪送球で植田は一気に三塁へ。2死三塁からノイジーが右前に同点打を右前に運び、ついに流れを引き寄せた。

それでも指揮官は満足せず、動き続けた。続く坂本の安打で2死一、二塁とすると、二塁走者をノイジーから俊足の島田に代えた。

「本当は島田まではいきとうなかったけどな。(延長も考えて)ノイジーは1枚残しとかなあかんと思ったけどな。7、8番がようヒット打っとったから。今日はちょっと勝負と思った。外野手2人を代えるのはな、1イニングで、なかなか難しいけどな」

3番森下と6番ノイジーが打線から消える攻撃力低下のリスクを背負ってまで勝負に出た。代走島田でDeNAの外野陣を前進守備におびき出し、木浪が右翼の頭上を越す勝ち越しの2点タイムリー二塁打で即答。代打糸原も的中の中前適時打で一挙4点を奪った。

それまではチャンスはつくってもあと1本が出なかった。「あんまり打つだけじゃ点数入らんから動いたよ」。3回は2死一塁から近本を走らせ、途中で止まったが捕手の悪送球で二塁を奪った。4回も大山に盗塁させるなど、前回完封された東を揺さぶり続けた。

横浜での連敗を止めたが、気に止める様子はなかった。「オレは去年は知らん。(今年)5回やって勝てんかって、今日勝つだけやんか。オレは何にも思うてない」。打てなければ策を打つ。就任時から「ベンチで点を取る」を自負してきた采配力で逆転劇を導いた。泰然自若のタクトで首位戦線を走る。【石橋隆雄】

■しぶとく右前に同点打

阪神ノイジーが値千金の同点打を放った。1点を追う8回2死三塁。DeNA伊勢から右翼へのライナーを放つと、蝦名がグラブを伸ばしたダイビングキャッチをくぐり抜けて打球は転々。しぶとい一撃で試合を振り出しに戻した。「落ちてくれて良かった。みんながつないでくれて、木浪選手が勝ち越しのヒットを打って。役割をこなせて良かった」。6回にも東から左前打を放つマルチ安打で気を吐いた。