阪神近本光司外野手(28)に特別な感情はなかった。

3回に12試合連続安打となる左前打を放ち、今季100安打。4連勝を決めた試合後、チームバスへと続く道を歩きながら、あっけらかんと言った。

「特に思うことはないっすけど。まあ、はい、100本目打てたと」

53~60年にかけて8年連続でマークした吉田義男以来、球団3人目となる新人からの5年連続100安打だ。虎で半世紀以上出ていなかった記録に到達しても、ヒットマンにとっては通過点でしかない。

節目の1本が飛び出した打席には、らしさが垣間見えた。左腕石田に対し、1ボール2ストライク。5球目の内角114キロカーブをファウルに。「審判に聞いたらボールと言ってたので、ああ、ボールかと」。すぐさま頭を整理した。

「どうしようかなという感じでしたね。真っすぐかな、フォークかな、スライダーかな、カットかなって」。捉えたのは144キロ直球。追い込まれれば、より一層思考をめぐらせる。今季の三振数「49」はチームの規定打席到達者の中で最少だ。プロ5年目。磨いてきた対応力が、安打量産の根底にある。

6回先頭では二塁打。今季30度目のマルチ安打で出塁し、追加点のホームを踏んだ。グラウンド整備直後のイニング。「6回のイニングで3打席目が回ってくるって、僕の中では大事な試合の流れだと思っている」と集中力をぶつけた。「結果的に二塁打でしたけど、塁に出られたことが大きかった。それが得点につながったのはよかったと思います」。リードオフマンの仕事を果たし、納得顔だ。

右肋骨(ろっこつ)骨折から復帰後、打率3割4分4厘でチームは10勝3敗1分け。「接戦もありましたし、逆転もあったし、チームとしては勝てたのでよかったです」。背番号5が生み出した流れに、虎が乗っている。【中野椋】

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