“恐怖の8番”で優勝マジック21だ。

阪神木浪誠也内野手(29)が1点を追う5回に逆転タイムリー。7回にはプロ初の満塁弾で勝利を決定づけ、プロ初の6打点の大活躍で4度目の6連勝に貢献した。チームは貯金を今季最多の28に増やし、巨人から10個の荒稼ぎだ。パ・リーグではこの日、オリックスに優勝マジック24が点灯。1964年(昭39)の南海-阪神以来、59年ぶりに関西シリーズが実現する夢がふくらんできた。

   ◇   ◇   ◇

木浪の一振りでケリをつけた。1点リードの7回1死満塁。「細かいことは考えずに」と打席に臨んだ。この回から登板した4番手鈴木康と対峙(たいじ)。甘く入った2球目、135キロのスライダーを逃さなかった。その瞬間「行ったかも」と確信めいた打球は、右翼席へ一直線に飛び込んだ。今季385打席目で生まれた1号アーチは、勝利を決定づけるプロ入り初のグランドスラム。「あまり考えないで初球からいけた。ああいう形で打てたのは、すごく良かった」。満面の笑みで、かえした3走者とハイタッチを交わした。

決勝打もこの男だった。1点を追う5回2死満塁。2番手船迫から逆転の2点タイムリーを中前に運んだ。今季の満塁打率は14打数7安打で驚異の5割。「(満塁時は)チャンスなので、積極的に行こうという気持ちしかない」。“恐怖の8番”は“満塁男”の異名も頂戴して絶好調だ。

4回の第2打席でも左二塁打を放ち、トータル3安打6打点。97安打、打点35はいずれも5年目でキャリアハイとなった。29試合を残し、どちらも同期近本との「キナチカ」で活躍した1年目を超える好成績だ。「1年目を超えられたのはよかった」と語るが「(こだわりは)規定打席ですね」と満足はしていない。打率は2割9分。初の規定打席到達&3割のチャンスは逃さない。

岡田監督も「まさかやな」と驚きの満塁弾だった。それでも「全然打順を上げるつもりもないし」と、今後も8番で固定起用し続ける方針だ。先発青柳も6回途中3失点と粘りを見せた一戦。「やっぱり先発もね、ずっと6回ぐらいまで投げてるし。打つ方とピッチャーが良い流れで来てるんじゃないかな」と、投打のかみ合いににんまりだ。

球団新の東京ドームでの巨人戦6連勝。貯金は今季最多の28に増やしたが、うち巨人から10個の荒稼ぎだ。2夜連続のG倒で、チームは4度目の6連勝。優勝マジックは21に減らした。29日からは本拠地甲子園での戦いが再開。一気にカード3連勝を決め、最高の形で聖地に戻る。【波部俊之介】

◆1964年(昭39)の御堂筋シリーズ セは阪神、パは南海(現ソフトバンク)が優勝を飾った。阪神は梅田、南海は難波と、大阪の北と南の中心地にターミナル駅を置いていた。この2駅を結ぶ大阪の大動脈から「御堂筋シリーズ」の異名を取った。2勝3敗と王手をかけられた南海は、外国人投手スタンカの、2日連続完封勝利の離れ業で、4勝3敗で日本一を達成した。関西にはセの阪神、パは南海のほか阪急、近鉄の4球団があったが、以後日本シリーズでの関西対決はなかった。