岡田ファミリーも歓喜! 岡田監督の陽子夫人(64)と長男・陽集さん(38)が日刊スポーツに特別手記を寄せた。V監督を支えた虎のファーストレディーはチームスローガン「A.R.E.」誕生の秘話を披露。愛息は海外勤務するインドネシアから「かっこいいよ!」とメッセージを届けた。【聞き手=寺尾博和編集委員】

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突然の“岡田コール”に感極まりました。でもほっとしました。マジックが点灯したとはいえ、必ずしも優勝できるとは限らない世界なのはわかっているつもりでした。今は安堵(あんど)したというのが正直な気持ちです。

最後は突っ走った感じで、球団史上最速Vとうかがって驚きです。主人は知人からいただいた赤飯を食べて家を出たので“前祝い”になりました。孫たちも駆けつけて、その瞬間を見届けることができたので良かったです。

05年はすでに出来上がったチームを率いた優勝でした。今回はベストシーズンを送ったことがない成長過程のメンバーばかりで、監督として自身がつくり上げたという手応えがあったのではないでしょうか。

若手が監督に登用される球界の流れにあって、65歳の主人が吉田義男さん、野村克也さんの就任時より1歳上とうかがったときは「エーッ!」と驚いたものです。

監督に復帰するまでの間も「なんであんなとこ守ってるねん?」とかテレビにつぶやく姿を間近で見ていたので、また現場でやりたいんだろうなと思っていました。

“オカダの考え”を反映させたのがスローガンの「A.R.E.」です。広告代理店に勤務する妹に相談を持ちかけて完成しました。特に“R”(リスペクト)には、技術だけでなく、伝統を継承する意味のメッセージを込めたつもりです。

キャンプでOBの鳥谷さん、赤星さんらを臨時コーチに招いたのも、自分が先輩から伝授されて受け継いだことを意識したと思います。タイガースの歴史と伝統をつなぐ責任の証しだったのではないでしょうか。

時には「しんどいよ」ともらしたこともあります。負けが込んだ交流戦は雨もあったし、移動も大変で苦しかったと思います。自宅では遠征先のホテルであまり食べないような、ほっこりした料理で、できるだけリラックスしてもらうことに努めたつもりです。

主人は現役時代から球場を行き来する道順を変えるなど験担ぎをしてきました。わたしもテレビで試合を見る椅子の位置を変えたり、YouTubeのダイジェスト版を見て勝った日は次も見るとか、同じバッグと靴をそろえて出かけるなど、自然と体が動いたのは不思議でした。

ペナントレースを戦い抜く過酷さを、将としての“やりがい”が上回った。わたしはそう見ていたし、なにより阪神を強くしたい一心で、タイガースの伝統をつなぐ使命感を持ち続け、そして“二人三脚”で戦ってきたつもりです。

夢は達成されました。甲子園で宝塚歌劇のフィナーレを見ているみたいでした。主人はこの優勝で学んだ後輩が、タイガースの“未来”を築き、継承してくれると信じていると思います。ファン、関係者の皆さまに、心より感謝いたします。おめでとうございます--。(阪神監督夫人)