ミスターホークスが監督1勝だ。ソフトバンクがオリックスとの開幕戦(京セラドーム大阪)を白星で飾った。小久保裕紀新監督(52)が試合前のミーティングからナインを猛ゲキ。7回には4番山川穂高内野手(32)の移籍1号が飛び出してリーグ3連覇の王者を突き放した。先発有原航平(31)も7回途中1失点と力投。小久保ホークスが最高の船出だ。

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左手の人さし指を上げた。右手には山川から受け取ったウイニングボール。小久保監督は「2軍のウイニングボールは2つあるんですけど」と話すと、思わず「ふふふ」と笑う。「1軍は初めてなので格別ですね」。ソフトバンクの指揮官として記念すべき1勝。戦う顔が少しだけ緩んだ。

柳田が先制犠飛、山川が決勝ソロ。先発の有原が試合を作り、松本裕-藤井-オスナの勝利の方程式が締めた。理想的な試合展開に「ピッチャー陣を含め、みんな本当にいい仕事をしてくれましたよね」と再びニンマリ。練習前には出陣前最後のミーティングを開き「プロフェッショナル」について熱弁した。「仕事に対する熱意、情熱、誇り、プライドを持ってやり切りなさい」。個々が己の役割を認識した結晶がこの日の勝利。ナインが指揮官のゲキに応えた。

13年、侍ジャパンの監督に就任した。日の丸を背負った栄誉、重圧を体感した。現役時代と同様、それ以上の感情が小久保裕紀の胸を襲ったこともある。そんな軌跡も「当たり前のように忘れられていくんやで」と言う。イチロー氏も同様の言葉を語っていたことも知った。そして小久保監督は腹をくくった。「負けたらみんなは去っていく。勝負の世界ですから。分かりやすい」。

満を持してミスターホークスがソフトバンクの監督に就いた。祝福の言葉と激励会は数え切れないほど受けた。すさまじいスポットライトが当てられながら慢心がないのは、結果が全てだと分かっているから。「これはもう全部、勝つことでしか恩返しできない。そんな気持ちよ」。

主力がチームを引っ張る「王イズム」の継承。若手の底上げ。「勝利の女神は細部に宿る」から信じる美しい野球の確立。組織学の勉強も重ね、就任直後から小久保改革を進めてきた。目指すのは理想達成ではない。しのぎを削るペナントレースで勝つためのチーム作り。いつかは風化されても、強いホークスを取り戻すため、周囲の恩返しのためだ。生まれ変わった小久保ホークスが、記念すべき、特別な1勝を刻んだ。【只松憲】

▽ソフトバンク松本裕(7回2死二、三塁の場面で西川を空振り三振に仕留め)「昨年から緊張感のある場面で投げさせてもらっている。打者を抑えることしか考えてなかった」

▽ソフトバンク甲斐(7回、2点差とする左前適時打に)「打ったのはスライダーです。とにかく追加点を、という気持ちだけでした。有原が踏ん張っている中で、追加点を取ることができてよかった」

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