これが開幕投手の力だ。ロッテ小島和哉投手(27)が今季両リーグ一番乗りとなる完封勝利を挙げた。

直球を軸にストライク先行で、オリックス打線を4安打シャットアウト。今季最短試合には4分及ばなかったが、2時間14分で料理した。負ければ1年ぶり単独最下位だったピンチを救った。開幕から3カード目で初の初戦白星をもたらし、チームの勝率5割復帰は目前だ。

   ◇   ◇   ◇

3年ぶりの感覚だった。小島はベンチからマウンドに向かうと、スタンドの手拍子を浴びた。その気分を「あまり例えが見つからない。2回目なので背中がゾクゾクってしました」と言った。完封は3年ぶり3度目だが、いずれも敵地。9回のZOZOマリンのマウンドに上がるのは「2回目」で、1失点完投した21年9月の楽天戦以来。やはり、ホームの声援は特別だった。オリックス西川に右前打を許し初めて先頭を出したが、後続をピシャリ。声援はもっと大きくなった。

「1-0で勝てたのが何よりもうれしいです」と、投手冥利(みょうり)に尽きた。昨季は12球団でロッテだけ完封した投手がいなかった。今季は一転、12球団一番乗り。しかも、しびれるスコアで果たした。唯一の得点圏は冷静かつ強気に封じた。初回2死二塁で4番森。カウント2-2から佐藤のサインに3度、首を振る。内角へ真っすぐを突っ込み、左足を引かせた。フルカウントからのスライダーは甘かったが、直前の1球が効いた。打ち損じの左飛で切り抜けた。

真っすぐを軸に-。試合直前のブルペンに理由があった。真っすぐが走り「いい球を使っていこう」と佐藤と確認。当初のプランを変更した。右にも強打者が並ぶ。「本当にいい打者ばかり。相手の特徴よりも、まずは自分のいい球をしっかり投げる」。胸元へのクロスファイアをちゅうちょしなかった。

昨季はリーグワーストタイの被本塁打14。うち12本は右に打たれた。こちらも試合直前、ソトに助言をもらった。「引っ張っても、逆方向にも長打を打てる。ネフタリ先生に。これ(助言の中身)言って打たれたら、ちょっと。これ以上は聞かないでください」と冗談ぽく質問も封じた。5回3失点で涙をのんだ1週間後。「明日は種市がしっかり投げてくれると思います」。勝利のバトンを託した。【古川真弥】