<西武8-7オリックス>◇16日◇西武ドーム

 負けゲームと思っても、今年の西武はがけっぷちからでも強い。劣勢をはね返す左翼への2本のアーチが、ミラクル逆転劇へつながった。9回にボカチカ外野手(32)の同点3ランで追いつき、延長10回には代打平尾博嗣内野手(32)が初のサヨナラ弾で決めた。

 致命的なミスが続いても、誰ひとり下を向かなかった。ブラゼル、ボカチカの連続タイムリー失策が絡んで7回に4失点。右翼の緩慢守備で2者を生還させたボカチカは、バットでとりかえした。9回1死一、三塁。直前に空振りしたオリックス大久保のフォーク連投を見逃さず「同じ攻めをしてくることは頭にあった」と何度も手を突き上げて喜びを爆発させた。

 押せ押せの流れに、平尾も乗った。10回1死から代打で大仕事。4年ぶり3度目のサヨナラ打だが、本塁打は初めて。「やっちゃいましたあー。結果が出なくてファンのみなさんには心配をかけましたが、これでチャラくいけます。これから日サロ(日焼けサロン)に行ってきます!」とお立ち台で声を張り上げた。オリックス清原の古巣登場に沸いた西武ドームで、最後は大歓声を独り占めした。「代打でランナーなし。初球のストライクを打ちたいと無心でいったら、最高の結果になった」。ムードメーカーだけでなく、試合状況を客観的に分析できる目が1発につながった。

 今季6度目のサヨナラ勝ちで勢いづいたチームは60勝目で、2位ソフトバンクに6・5ゲーム差をつけた。17日のオリックス戦で勝つか引き分け、ソフトバンクが日本ハムに負ければ優勝マジック30が点灯する。【柴田猛夫】