前パイレーツ桑田真澄氏(40)が、早大・斎藤佑樹投手(2年)のコーチを務める可能性が出てきた。桑田氏は19日、東京・新宿区の早大で「スポーツビジネスの最前線」の臨時講師を務めた。年明けに早大大学院を受験するとあって、約500人の学生の前で「来年は(早大の)練習も見たい」と野球部への熱い思いを吐露。日本学生野球憲章により直接指導が可能となるのは斎藤が4年生になる10年度からだが、入学前にアマチュア指導者への強い意欲を示した。

 桑田氏がアマチュアの指導者へ意欲を見せた。「臨時講師」として初の大学の教壇で早大野球部への思いについて言及した。「今年は斎藤君の投球も見させてもらった。来年できることならプレーだけじゃなく、練習も見たい。大学野球の良さを見つけたい」。来年1月の早大大学院入試に合格すれば、幼少時からあこがれた「ワセダ」の学生になる。

 斎藤ら学生トップの練習方法にも興味を持っている。斎藤とは今年1月の高校野球シンポジウムで初対面。甲子園優勝、投手としては小柄な体格など、共通点の多い2人の会話は弾んだ。6月には桑田氏が早慶戦を観戦。斎藤は5回2失点で敗戦投手となったが、配球の問題など負けた原因をスタンドから鋭く指摘していた。

 学生野球憲章第12条で、プロ野球退団から2年以上が経過しないと直接指導ができないことは把握している。またコーチを務めるにも当該校からの届け出が必要。早大側がコーチを要請するかは不明だが、斎藤は桑田氏と対面した際、「時間があれば、桑田さんが今までやってきたことを全部聞きたい」と尊敬している。桑田氏は今年3月に現役を引退したため、10年3月を過ぎて要請があれば特別コーチになれ、斎藤が4年生のシーズンには間に合う。それまで大学院の授業を受けながら、野球部を間近で視察し「研究」する。

 フリーの立場となった今年、アマチュアとの交流が多かった。長男が入学した桜美林高の観戦をはじめ、6大学野球視察や夏の甲子園の記念イベント参加。11月にはプロ同期の集まりで中学生を指導し、「しばらくは、アマチュア野球を発展させることに力を注ぎたい。指導者の育成にも協力していきたい」と話していた。

 授業には500人以上の学生が集まった。桑田氏が単位のかかる大学の授業で講師を務めるのは初めて。「何か感じてもらえればと思っていたけど、中には涙している人もいて」と感激した。挫折の繰り返しという半生を語り、記念のユニホームを学生に着用させるサービスも見せた。早稲田キャンパスで学生たちと直接触れ合い、「人生あきらめなければ、実現できることがあると思った」と感慨深げに話した。

 授業を担当する平田竹男教授は「この世代が聞きやすい人に話してもらっています。今は就職難で苦しんでいる子もいるし、いいメッセージをもらえたのでは」と桑田氏に感謝した。桑田氏と早大との関係は日に日に深くなっている。甲子園20勝の大投手と、ハンカチ旋風を巻き起こした斎藤。ヒーロー“共演”が実現するかもしれない。【高宮憲治】

 [2008年12月20日8時15分

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