<阪神7-3ヤクルト>◇11日◇甲子園

 阪神クレイグ・ブラゼル内野手(29)のごっつい1発に甲子園が揺れた。1点を追う4回無死一、二塁。ブラゼルが、チームトップとなる5号3ランを放ち、一気に逆転だ。甲子園では初めてとなる右翼へのアーチ。浜風を考慮して、これまで封印していたが、勝負の一振りが虎党が待つ右翼席へ届いた。4番金本とは初アベック弾。恐怖の7番が頼もしい!

 その弾道にベンチもスタンドも総立ちになった。1点リードを許した直後の4回裏。ブラゼルが村中のスライダーをすくい上げ、右翼席にドデカい1発をたたき込んだ。逆転の決勝5号3ランだ。今季初のお立ち台。「僕は金本さんのあとを打って頑張ります!」と叫んだ。今年の猛虎打線には、恐怖の7番がいる。

 実は甲子園で右への1発は初めてだった。昨年を含めた5発は、いずれも中堅から左方向。他球場で打った15発は13本が右方向にもかかわらず、マンモスでは引っ張りを封印してきた。その心は「右へ打っても浜風には勝てない。でも左方向へは伸びるから」だった。

 だがこの日巡ってきたのは、取られた1点をすぐ取り返したい無死一、二塁の場面。「何とか走者を進めようと引っ張りに行った」。封を解禁して最低でも右飛を狙ったところ、思いがけず甘いコースに来た。あとは「バットに当たって飛んでいってくれた」と笑った。

 5発はもちろんチームトップだが、打率も3割1分9厘でリーグ11位。日本3年目の進化は本人が肌身で感じている。「去年に比べて、低めの変化球を我慢できるようになったんだ」。08年西武時代はリーグ4位の27発を放ちながら、打率は2割3分4厘。打撃の粗さが解雇の要因となった。だが、移籍後は和田打撃コーチと確実性を求め合い、昨年は打率を2割9分1厘までアップ。さらに今年は村中をはじめ、苦手なはずの左腕も打率5割&3発と打ち込んでおり、本塁打は驚異の51発ペースだ。

 同じマンションに住むマートンの大活躍も励みになっている。5日に後輩助っ人に女の子が誕生すると、すぐ誕生祝いを贈った。愛くるしいテディベアと子ども用のブランケットは、ラニー夫人(30)のセレクト。自身も昨年8月末、試合中に第1子の男の子を授かった感激があるだけに、一緒になってオメデタを喜んだ。

 「マートンもそうだけど、1人がよければ周りにもいい影響が出てくる。チームはとてもいい状況だよ」。昨年とは違うブ厚い打線のド迫力。その後方に恐怖の7番が待ち構える。【松井清員】

 [2010年4月12日10時15分

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