オリックス李承■内野手(34=巨人)が22日、古巣から「移籍1号」を放った。4回。オール直球勝負の東野の低めをすくい上げ、右翼ネットを直撃する先制3ラン。9回も越智から二塁打を放ち、4打数2安打3打点。昨年自らを放出した巨人への恨みつらみは口にせず、バットで復活ぶりをアピールした。

 数カ月前までの仲間にオリックス李承■を名乗るにはこれが一番だった。T-岡田が倒れ、迎えた4回1死二、三塁だ。すべて直球で挑んできた東野の3ボールからの4球目、真ん中低めをすくい上げた。「思い通りのスイングだった」。右翼の防球ネットに突き刺す先制3ラン。巨人ファンからも届いた声援を背にダイヤモンドを踏み締めた。

 嫌でも周りから雑音が入った。昨年まで所属し、戦力外通告を受けた巨人との実戦。この日も「5年一緒にプレーし、いろんな思い出がある。いいチームだけどこれからは敵として他のチームと一緒」と特別な感情はないと繰り返した。ただ、昨年韓国で行った入団会見では「巨人が間違っていたことを証明する」とも発言し、物議を醸していた。今は放出した古巣への恨みつらみを、新天地でプレーする喜びが上回る。

 虎将時代から対戦してきた岡田監督は再起にかける思いを感じていただけに、この1本を素直に喜んだ。

 「気持ち的に楽になったんちゃうか。巨人戦でああいう形で出てな。キャンプインした時に体も絞れてたし、だいぶ打ち込んできた言うとったしな。今年にかける思い、いうんか、ここ2、3年不本意やったしな。いい時の感じをつかみたい思いがな(強い)」。

 今の練習量を李承■自身も「巨人時代の2倍」と言い張り、必死さがうかがえる。この日のバットは41発を放った06年モデル。昨年より20グラム軽量化し、スイングの鋭さも増した。直球に力負けせず遠くに飛ばすアーチストとしての才能は健在だと証明してみせた。

 9回にも越智から二塁打で4打数2安打3打点。古巣のキャンプ地で存在感をみせた。

 「今は結果でなく、内容、過程に集中していきたい。まだ足りないものはあるけど、実戦感覚を取り戻して開幕に入りたい」。

 日韓通算468発のアジアの大砲が不敵に笑った。※■は火へんに華

 [2011年2月23日11時17分

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