2012年も大ベテランが「切り札」じゃ!

 広島前田智徳外野手(40)について、松田元オーナー(60)が7日、公の場で初めて来季の必要戦力と認めた。この日、都内で行われたオーナー会議に出席した球団トップが明言した。今季は代打一筋で52試合に出場した勝負強さ、存在感を球団も高く評価。プロ23年目の来季も代打の切り札として君臨する。

 通算2099安打の力量は広島の財産だ。クライマックスシリーズ進出が厳しくなり、来季での巻き返しを期すカープは前田智を欠かせない戦力として計算している。今季も左の代打の切り札として活躍したが、前日6日、若手を起用する方針のため出場選手登録を抹消されたが、この日は球団のツートップが初めて公の場で来季の戦力として認めた。

 松田オーナーが「若い子を試合に出すために、いま外れただけ。来年もやってもらわなあかん」と話せば、鈴木球団本部長も「(現役を続けるという)その前提だけど。まだ本人とは話をしていない」と口をそろえた。前田智自身は態度を表明していないが、野球への情熱は衰えておらず、W首脳のお墨付きを得て、来季現役の大きな後押しになった。

 今季、代打として打率2割5分の成績を残している。交流戦まで不調だったが、6月24日中日戦(マツダスタジアム)の8回、右翼へ決勝適時二塁打を放つと、同26日の同カードでも先制の決勝タイムリーを記録した。活躍後は独特の言い回しで「自分はもう3年前に終わってますよ。ただ、終わった中でも役に立ちたい。衰えた人間なりの対応をするだけ。代打では(置かれた現状や結果など)考えている暇はない。まだ勉強中。奥が深いです」と前を向いていた。

 前田智の存在はチームにとって計り知れない。松田オーナーは「前田ほど勝負強い打撃をできる打者は、うちには見当たらない」と絶大な信頼を寄せる。打撃面だけでなく、野球に取り組む姿勢は丸ら若手選手への手本になっている。試合日の調整法を真似る選手もいるほど、影響力は強い。周囲に「野球のためなら、すべてを犠牲にできる」と話すなど、好球必打に執念を燃やす。

 今年のシーズン負け越しも決まり、残り試合は若手中心に起用される。今季の出番は終わり、一足早くオフに入った。チームで唯一、91年の優勝を知るヒットマンが、来年も野村カープを支える。