<阪神1-0広島>◇26日◇甲子園

 和田阪神が発散する勝利への執念に、天も味方したのか。延長11回、雨が激しくなった。甲子園のグラウンドは微妙に変化していく。そして、2死からドラマは起きた。マートンの打球を一塁岩本が捕球ミス。失策で二塁へ。幸運なサヨナラのチャンスで、打席に立ったのは平野恵一内野手(33)だった。

 「安藤さん、小宮山、球児、榎田、本当に頑張っていたんで。野手全員で何とかしたい。絶対に打ってやる。決めてやるという強い気持ちでいきました。ここで打たなきゃ、男じゃないと思っていました」。投手陣が必死になってつないできた「0」を無駄にはしない-。全員の執念を背負った平野は広島サファテの内角速球を振り抜いた。打球は詰まったが、ぬかるみ始めた二塁ベース付近で、広島東出のグラブを避けるようにイレギュラーし、失速しながらセンターへ。その間に代走俊介がホームを駆け抜けた。まさに天をも味方につけた執念のサヨナラ劇だった。

 平野はプロ初のサヨナラ打に拳を突き上げ、珍しく感情を爆発させた。「いつもはあまり表現しない方なんですけど、たまにはしてみようかと思って」。和田監督も指揮官として初めて味わうサヨナラ勝利に「いやあ…、もう、ちょっと、言葉がないですね…」と興奮を隠せなかった。【鈴木忠平】