<ロッテ3-6西武>◇26日◇QVCマリン

 巻き返しに向けて勝ち頭が踏ん張った。西武の岸孝之投手(27)が7回無失点でリーグトップタイに並ぶ7勝目を挙げた。2回に強烈な打球を左膝の裏付近に受けたが、粘り強く投げて7回1安打とほぼ完璧な投球。首位ロッテのエース成瀬との投げ合いを制し、上位進出への機運をつくった。

 7回裏、マウンドに上がった西武岸の左足は、ガチガチだった。2回裏にライナーが左膝裏を直撃。回を追うごとに増す痛みに、気力と体力は限界寸前だった。「6回から徐々に(患部が)固まってきて…。6、7回は力が入らなくて、(7回は)限界かなと思った」。“無感覚状態”に陥ったが、最後の2回をパーフェクト。投球を支えたのは、エースとしての責任感だった。

 早々とマウンドを去るわけにはいかなかった。防御率1点台で4完投の成瀬を相手に、打線が1回に3点の援護。低迷するチームを勢いに乗せるために、エース相手の勝利は絶対条件だった。先発の柱として期待される中、防御率1点台でも自身の貯金は1。「1点もやらない気持ちで力を込めて投げた」と語り、打球直撃後は打者18人に対し、圧巻の無安打投球。クールな男が、勝負の鬼に徹した。

 責任感の強さは、あの時も同じだった。06年8月に行われた世界大学選手権。ソフトバンク大隣、巨人金刃ら全8投手がプロ入りするほどの層の厚さを誇ったが、公式球として使用されたボールが重く、肩痛を訴える投手が続出。岸自身も違和感があったが、投手陣の軸として、フル回転した。当時を金刃は「痛くても、マウンドに上がれば普通に投げる。岸君がチームのエースだった」と回想。熱投する姿は、仲間の胸を熱くさせた。

 7回1安打無失点の好投で、リーグトップタイの7勝目。奪三振王とともに、投手2冠に躍り出たが「それ(タイトル)は考えず、先発の仕事をしていけばついてくると思う」とクールさを取り戻した。渡辺監督は「7回までで(痛みが)いっぱいいっぱいの中、よく投げてくれた」と賛辞を惜しまなかった。不動のエースだった涌井は、守護神に配置転換。ともに先発ローテーションを支えてきた背番号11が、先発陣の柱に君臨する。【久保賢吾】