<ヤクルト2-0阪神>◇3月31日◇神宮

 阪神ドラフト1位の藤浪晋太郎投手(18=大阪桐蔭)がドラフト制後、高卒新人最速となる開幕3戦目の先発マウンドに立った。ヤクルト戦で6回を投げ、2失点。初黒星を喫したが、わずか3安打で7三振を奪う力も見せた。このまま先発ローテーションに収まることも決まり、初勝利が遠くないことを予感させる確かなスタートを切った。

 上着が手放せないほど冷え込んだ神宮で、藤浪の投球が熱を帯びた。ヤクルト打線のバットがブンブンと空を切る。2回無死一、二塁。八木を3バント失敗に追い込むと、田中浩は外角直球で、上田はフォークで空振り三振に仕留めた。3連続Kで、連続四球からのピンチを断ちきった。

 「特に緊張とかはなかったです。高卒どうこうではなく、しっかり、言い訳せず投げようと思っていた」。年齢、キャリアは頭になかった。1回先頭の田中浩は打ち取った当たりを一塁の新井良がはじく失策。不運な形から1死二、三塁のピンチを背負い、畠山の中前打でプロ初失点。中盤立て直したが、6回2死で抜けたフォークを雄平に右翼席に運ばれた。「すっぽ抜けて、甘く入ってしまった。悔しさというより反省です」とプロの厳しさを味わった。

 打線が前日に続く完封を喫し、援護なく初黒星。「点は入らなかったですけど、自分がリズムを作れなかった。ムダなことをできるだけ削って、勝てるピッチャーになりたい」と決意をあらためた。

 高校3冠を達成した大阪桐蔭時代に比べ、プロでは投げ込み量や肉体への負荷が少ない練習メニューに不安が募った。3月12日、センバツを控えた母校を激励に訪れ、関係者にふと漏らした。「フォームがバラバラなんです。ここでフリー打撃に投げたいくらいです」。冗談交じりに「投げてみるか?」と言われたが「今投げても、森(友哉)にボコボコに打たれますよ」とこぼすほど、追い込まれていた。

 高校時代にもひんぱんに取り組んでいた遠投を、ブルペン投球に代わって取り入れた。「体を大きく使うイメージ」を体に染み込ませると、不安は徐々に取り除かれた。

 「収穫の多いピッチングだったので、今後につなげたい」。敵地神宮でカード勝ち越しを逃した。それでも負け投手に、やじや罵声は飛ばなかった。デビュー戦の105球は、プロでも通用することを感じさせた。【山本大地】

 ▼ルーキー藤浪が6回2失点の黒星デビュー。高卒新人が開幕から3試合目までに先発したのは、チーム2試合目の阪神戦に投げた62年柴田(巨人)以来、51年ぶり。ドラフト制後(66年以降入団)では99年松坂(西武)ら4人の4試合目を抜く最速で、開幕カードで先発したのも初めてだ。リリーフでは67年浅野(サンケイ)89年岡(ヤクルト)が開幕戦、00年苫米地(広島)が3試合目に登板しているが、いずれも勝敗は付かず。開幕から3試合目の敗戦投手もドラフト制後の高卒新人では「最速」となった。