<阪神2-4ソフトバンク>◇17日◇甲子園

 29歳のラッキーボーイが誕生した。ソフトバンクは福元淳史内野手(29)がプロ初打点を含む2安打、守っても2つの美技と大活躍。首痛の本多に代わり、昨年巨人からトレード移籍した推定年俸600万円男が攻守で猛アピールした。投手陣は先発帆足から5人の継投で逃げ切り、交流戦の今季初勝利を挙げた。

 最後は代打桧山の二ゴロを軽快にさばいた。ナインと勝利のハイタッチが心地いい。プロ5年目、29歳の福元が、甲子園で初のヒーローインタビューに呼ばれた。「打席に入った時は1球1球食らいついてやっている。高校時代は甲子園に出ていないが、プロで活躍できて良かった」。ここまで首位打者のウエスタン・リーグで、たっぷり太陽を浴びて日焼けしてきた顔が、最高に輝いた。

 首痛の本多に代わり2戦連続のスタメン。15日広島戦でプロ初安打した勢いを持ち込んだ。初回の第1打席はメッセンジャーの直球を中前打。2回には2死三塁から再び直球を力負けせず左前に運び、これがうれしいプロ初打点。「やっぱりうれしい。最初のヒットで勢いに乗っていた」。7回には犠牲バント。守っても1、4回にダイビングキャッチと「2番二塁」の役割を十分に果たした。

 大卒後、1度は野球の道をあきらめた苦労人。育成入団した巨人で芽が出ず、昨年6月にトレード移籍。5年目の今季は「もう歳も歳ですから。何とか頑張りたい」と背水の覚悟だった。そんな福元は毎年、家に1年の目標を書いて貼っている。今年は「去年より充実したシーズンを送ること」「家族のためにも頑張る」の2つだった。昨年10月に婚姻届を提出したばかり。妻友絵さんにも「いい報告ができる」と喜んだ。

 先日サヨナラ打のオリックス山本、楽天仲沢らドラフト同期入団の存在も刺激になっている。自身との交換で巨人入りした立岡も、東京ドームでお立ち台に立ったばかり。奇妙な縁に「びっくりした」。交流戦3連敗スタートなら球団初という悲劇を阻止。阪神の金曜日今季全勝、メッセンジャーの昨年9月から8連勝という「ダブル神話」をストップする立役者となった。「今はチャンス。打って守って何でもアピールしたい」。がむしゃらに、ひたむきに、勝利のために働く覚悟だ。【大池和幸】<福元淳史(ふくもと・あつし)アラカルト>

 ◆経歴

 1983年(昭58)8月24日、千葉県生まれ。市船橋から中大。

 ◆雑草男

 中大卒業後に野球から離れるが「もう1度やりたい」とNOMOベースボールクラブ入り。08年育成ドラフト4位で巨人入団。11年5月に支配下登録され、昨年6月にトレード移籍。

 ◆移籍後

 同7月にウエスタン・リーグで打率3割5分3厘をマークしてファーム月間MVP選出。1軍では代走の1試合出場。

 ◆のど自慢

 中学の時はバンドのボーカル。「GLAY」をコピーしており、今の本拠地でのテーマ曲は「SOUL

 LOVE」。

 ◆変身

 2ストライク後は低くコンパクトな打撃フォームに。自称「青木宣親打法です」。1カ月前から始めた。

 ◆サイズ

 174センチ、72キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸600万円。