<オリックス0-3巨人>◇13日◇京セラドーム大阪

 大人の投球でトンネル脱出だ。巨人先発の沢村拓一投手(25)が、4月25日のDeNA戦(岐阜)以来となる3勝目を今季初完封で挙げた。勝てない間の課題だった変化球の精度が高く、強打のオリックス打線を駆け引きで封じた。風格の漂うマウンドさばきも申し分なし。チームを首位に返り咲かせた。

 沢村のユニホームに汗がにじんだ。9回2死一塁。オリックス山本をキレと制球を重視した直球で投ゴロに仕留めた。派手なガッツポーズはない。今までの剛腕で鳴らすスタイルもなく、表情は涼しげだった。「回の先頭打者を1人も出さなかったことは良かったと思います」と、49日ぶりの勝利にも冷静さを貫いた。

 文句なしの好投を印象付けたのは、相手の主軸への内容だった。6回、3番バルディリスにはカーブが抜けて死球を与え、4番李には1安打されたが、要所は危なげない投球に終始。最速150キロの直球と110キロ台後半のカーブを織り交ぜ「緩急は打者が一番、嫌がるところだと思う」と、イメージ通りの攻めで、相手打線を封じ込んだ。

 長いトンネルからの脱出を後押ししたのは、準備段階での改善だった。調整でブルペンでのキャッチボール導入。「マウンドの傾斜で勝負している。5割程度のキャッチボールですよ」と、より実戦を意識したメニューを取り入れた。さらに、キャッチボール相手を座らせて行うことで制球力アップにも効果が出て、堂々の無四球投球を導いた。

 肩、肘の疲労感にも変化があった。5月22日の楽天戦。同年代の田中との投げ合いで実力の差を見せつけられた。力みまくって食らいついた翌日、「体の張りが、やばいっす」と、ポツリと漏らした。だが、この日は、ゆったりしたフォームで力みもとれ、ボールがよみがえった。「今のところ疲れは感じていない」と、登板直後の感想が、一皮むけた姿を物語った。

 最終回1死、相手李との最後の対戦。2ストライクからクイックで間を外して、三ゴロに切り捨てる頭脳プレーも披露した。「いい投球をしても勝てないこともあるし、悪い投球で勝てることもある。チームで動いていて1人で野球をやっているわけじゃない。チームが勝ったことが一番、うれしい」。プレーにも言葉にも大人の風格が漂ってきた。【為田聡史】

 ▼沢村が11年10月14日中日戦、12年4月13日DeNA戦に次いでプロ入り3度目の完封勝ち。ドラフト制後、プロ1年目から3年連続で完封勝ちを記録した巨人の投手は、66~78年堀内、79~86年江川、99~03年上原に次いで4人目だ。また、巨人投手の交流戦完封勝ちは05年高橋尚、08年内海、11年内海、12年杉内に次いで4人、5度目。右投手では沢村が初めて。