<中日2-7阪神>◇23日◇ナゴヤドーム

 あ~スッキリした!

 あのまま終わってたら、怒りがおさまらんところやったわ。3回にマートンの右翼フェンス直撃に見えた打球判定は、えっアウト!?

 抗議した和田監督が退場。怒り充満ムードを、新井良が逆転二塁打で一掃した。これで今季最多貯金15。巨人にも5差。いよいよミラクルが近づいてきたかも

 不穏な空気の中、良太は詰まりながらも、145キロ直球を押し込んだ。虎の怒りを乗せた飛球は最後にもうひと伸び。ジャンプした左翼和田のグラブをわずかに越えた。絶対に負けられんのや!

 二塁ベースに到達。鬼の形相で右アッパーカットを突き上げた。

 「熱い気持ち?

 それはみんなあったと思う。みんな熱い気持ちでやっているから、あのビッグイニングにつながった」

 “事件”は両チーム無得点の3回2死一、二塁で起こった。4番マートンの大飛球はフェンス直撃した直後、ジャンプした右翼平田のグラブに入ったかに見えたが、判定はアウト。和田監督は猛抗議したが、抗議時間5分超の遅延行為とみなされ退場処分となった。就任2年目で初の退場。16分間の中断後、選手の顔色は真っ赤に染まっていた。

 2点を追う6回、ナインの意地が結集した。先制打を奪われたマートンの二塁打もあり、1点差に迫って1死二、三塁。「その打席に集中することに変わりはない。なんとかバットに当てようと思っていた」。7番良太が大野から逆転2点二塁打を放ち、この回6安打5得点の猛攻を導いた。

 和田監督就任1年目の昨季、声出し枠から4番打者にまで引き上げられた。今季は開幕4番を任された。時にはベンチで怒鳴られ、2人きりでティーボールをあげてもらった。「オマエの思い切りのいいプレーが見たくて使ってるんだ」。時には甲子園で歩きながら青空教室で諭され…。「監督には本当に感謝してるんよ」。熱い思いを無駄にするわけにはいかなかった。

 10年まで所属した中日時代、尊敬する大先輩にプロの厳しさをたたき込まれた。一塁に就いたノック中、胸に構えた谷繁への本塁送球が少しでもそれると、捕ろうとしてもらえなかったこともある。かわいい後輩への、愛のこもった厳しさだった。「もっと練習しないと、と思ったよ。厳しさの中に優しさがあった。オンオフがはっきりしていて、プライベートではめちゃくちゃ優しくしてもらって、かわいがってもらったからな」。苦戦が続いていた大先輩との勝負は5打席全出塁で自身初の4安打。「完全にまぐれ」と照れ笑いだ。指揮官の良太にかけた熱意が、この日の大爆発を導いたのかもしれない。

 首位巨人が敗れ、ゲーム差は5まで縮まった。「タイガースは勝ち続けるしかない。しびれる試合が続きますけど頑張ります」。和田チルドレンは指揮官を男にするため、最後まで力を振り絞る。【佐井陽介】