<巨人4-3広島>◇23日◇東京ドーム

 優勝の余韻を際立たせる1勝だ。前日22日に2年連続35回目のリーグ優勝を決めた巨人は、高卒2年目の今村信貴投手(19)がプロ初勝利を挙げた。プロ2試合目の先発となった広島戦で、6回を2失点にまとめた。緩急を自在に操る投球で、文句なしの本拠地デビューを飾った。クライマックスシリーズ(CS)は先発の頭数が必要。大役ゲットの可能性も十分ある。

 今村が“しらふ”で勝った。前夜の歓喜の余韻が残るデーゲーム。りりしい顔つきで弱冠19歳の左腕が躍動した。「緊張しましたが(河野)元貴さんのミットを目掛けて思いっ切り投げました」と、河野との若武者バッテリーで東京ドームの主役を演じた。90キロ台のカーブ、スライダーに加え、決め球のフォークを低めに投げ込んだ。ピンチでも動じることなく、8奪三振で6回2失点に抑えた。

 前夜は1軍メンバーとして初めてのリーグ優勝の瞬間に立ち会った。試合後のセレモニーや、ビールかけで喜びをかみしめた。だが、19歳6カ月の今村は当然、ビールは飲めない。ミネラルウオーターを片手に、売り子の衣装でサーバーを担ぎ、先輩たちに“お酌”するだけ。午後11時には都内のホテルに戻り、この日に備えた。その“お礼”とばかりに4点の援護を受けた。「先輩たちはお酒が入っていましたが、打ってくれると信じていました」と感謝した。

 じっくりつくってきた下地があったから、どんな状況でも、ぶれなかった。1年目の昨年8月30日のイースタン・リーグ日本ハム戦で、リーグ史上21人目のノーヒットノーランを達成。快挙達成も「これで喜んで、すぐに寮に帰っているようでは、僕はここで終わる。他の選手のような能力はない。だから練習しかないんです」と、試合後は薄暗いジャイアンツ球場の外野で黙々と走り込んだ。

 今季は2軍のローテーションを守り2桁10勝をマーク。結果を引っ提げて1軍のマウンドに上がった。1軍デビューとなった16日の広島戦では5回1失点と好投し、この日の東京ドームのお立ち台にたどり着いた。CSの秘密兵器の誕生に、原監督も「空振りも取れる、カーブも放れる、クイックもうまい。2年生として素晴らしい。先発、リリーフ、いろんな形を含めて考えたい」と、うなずいた。強すぎる巨人に頼もしい新星が加わった。【為田聡史】

 ◆今村信貴(いまむら・のぶたか)1994年(平6)3月15日、大阪生まれ。11年ドラフト2位で大阪・太成学院大高から巨人に入団。最速148キロの直球と多彩な変化球を操る左腕。180センチ、74キロ。血液型AB。左投げ左打ち。年俸650万円(推定)。