竜の無印右腕がまさかの「監督賞第1号」になった。中日のナゴヤ秋季キャンプで12日、紅白戦が行われ、1年目の若松駿太投手(18)が好投。先発で4回を無安打無失点に抑えた。昨年ドラフトで最下位となる7位指名の18歳を谷繁元信兼任監督が評価した。グラウンドでは年齢も過去の実績も関係ない-。実力主義を掲げる新生ドラゴンズの象徴的な1日となった。

 谷繁監督が選んだヒーローは18歳の若松だった。紅白戦終了後、選手や首脳陣が囲む中で“監督賞”を告げた。サプライズ受賞に若松は「ビックリです」。“副賞”を聞かれ「言っていいんですかね…。使わずに大切にしまっておきます」とまたにやけた。

 1年前のドラフトで最後の最後に指名された純朴ルーキーが、新体制初の実戦で脚光を浴びた。確かに大崩れしそうにない。許した走者は2回先頭の福田に与えた四球だけ。最速141キロながら、落差のあるカーブを効果的に散らした。憧れの吉見ばりの制球力でアウトを重ねた。

 「コースにしっかり決まったので良かった。(谷繁監督から)ナイスピッチングって言われました」

 ファームで20試合に登板しているとはいえ、落ち着き払った投げっぷりはとても1軍未登板とは思えない。谷繁監督が若松の投球を目にするのは、初めてではなかった。兼任監督に就任した10月にもフェニックスリーグを視察し、若松の投球をチェックしていた。この日は熱い視線を送り、監督名でヒーローに認定した。「宮崎で初めて見たときから、あっというのはあった。試合をする上である程度のものは持っている。実戦向きというか。そういうのは出してくれた」と目尻を下げた。

 超新星の出現は、チーム再建の象徴となるかもしれない。今季の12年ぶりBクラスから、いかにしてチームを立て直すか。グラウンドの外では落合GMの大胆なコストダウンと編成で、チームが生まれ変わろうとしている。現場を預かる谷繁監督の方針はシンプルだ。「年齢は関係ない。実力のある選手が試合に出る」。競争することで、チーム力が高まる。若手の突き上げを歓迎するだけに、監督賞以上にうれしい18歳右腕の台頭だった。【桝井聡】<若松駿太(わかまつ・しゅんた)アラカルト>

 ◆生まれ

 1995年(平7)2月28日、福岡県久留米市生まれ。

 ◆自然児

 実家は「田んぼに囲まれていました」。最寄りのコンビニまでは約2キロあるという。

 ◆球歴

 小学4年で野球を始める。福岡・祐誠(ゆうせい)高2年まで投手兼内野手。同校3年の夏は福岡大会2回戦敗退。

 ◆精密機械?

 高校では土木科。2年の時には小型車両系建設機械の資格を取得。3トン以下の重機を自在に操る。

 ◆隠し玉

 12年ドラフト7位指名で入団。プロ球団からの調査書は、中日からしか届かなかった。

 ◆ピュア

 入団発表で名古屋にやって来た昨年11月30日、風俗店の黒服に声を掛けられた模様。「ちゃんと断れたので大丈夫です」。

 ◆大物の証

 左頬のアザが「バレンティンさんと同じ」と気に入っている。

 ◆サイズ

 180センチ、75キロ。右投げ右打ち。