“摂津超え”の大幅昇給だ!

 ソフトバンク千賀滉大投手(20)が9日、ヤフオクドーム内の球団事務所で契約更改交渉に臨んだ。大ブレークした育成出身の右腕は、今季の年俸650万円から2650万円増の3300万円で一発サイン。アップ率はエース摂津正投手(31)の313%(09年オフ)を上回る408%となった。来季は先発への強い意欲も口にした。(金額は推定)

 思わず笑顔になった。千賀は提示額の満足度を「自らの球速に例えると?」と聞かれ、「(自身の)マックスの156キロはいったかなと思う」と即答。「非常に高い評価をしてもらった。来年も頑張ろうという気になった」。さらに名字に引っ掛けて「“三”千賀はいきました」と3000万円突破を明かし、球団の最大限の評価に感謝した。

 5年ぶりBクラスで多くの選手が厳しい提示をされる中、タカの出世魚は約5倍以上の昇給を勝ち取った。今季は敗戦処理に始まり、セットアッパー、守護神まで務めた。うなる直球と消えるフォークを武器に、救援連続無失点イニングのリーグタイ記録(34回1/3)も樹立。すべてリリーフでチーム2位タイの51試合に登板、球宴も初出場。「育成で入ったころに比べると信じられない」。10年育成ドラフト4位で入団。270万円スタートの年俸は12倍以上に膨らんだ。育成出身で球団初1億円プレーヤーも視界に入ってきた。

 サインを済ませると、その席で球団幹部に配置転換を訴えた。「先発がしたいと言いました。心の中では来季からと思っている。僕は先発で上がってきた人間。中継ぎもやりがいはあるが、先発したい気持ちはあった」。昨年4月に支配下登録され、直後に2試合先発。ともにKOされた悔しさが今も残っている。既に投手コーチには意思を伝えた。今オフはFAで中田が加入し、阪神を退団したスタンリッジとも大筋で合意。先発ローテーション争いは厳しいが「監督にどんどんアピールしたい」と気合がみなぎっている。

 来年1月には中日・吉見と沖縄で合同自主トレ。約2年前に出会って以来、兄貴分と慕う存在から極意を教わる。先発への課題を「変化球でカウントをとること」という千賀にとって、制球力抜群の吉見は最高のお手本になるだろう。「いろいろ相談したい。吉見さんはベンチ掃除とか雑用もやるんですよ」と、技術のほか心構えも吸収する。

 先発用の調整を早くから行えば、リリーフを告げられた場合にも対応できる。現在はウエートトレが中心。秋季キャンプ中に3キロ減った体重を、まずは元に戻したいという。この日の更改前にもジムで鍛え「体がバリバリです」と笑った。シンデレラストーリーの続きを、来季も華麗に描いてみせる。【大池和幸】