<ヤクルト12-11阪神>◇5日◇神宮

 乱打戦の気まずい敗戦の中で、阪神マット・マートン外野手(32)が際立った。1点を勝ち越された直後の5回1死一塁。石川が投じた真ん中高めのシュートを強くたたいた。右翼上空をフラフラと舞い上がり、そのままスタンド最前列に吸い込まれた。石川が首をひねり、マートンも思わずバックスクリーン上の旗を見上げた。

 「完全にジャストミートできた感触ではなかったけど、よくスタンドまで飛んでくれた」

 フォローの風が強く吹いていたわけではない。この日2本目のアーチは、自らも信じられない今季3号の逆転2ラン。自己最多の1試合7打点を荒稼ぎして今季16打点となり、この時点で打点のリーグトップに躍り出た。この日は長女メイシーちゃんの4歳の誕生日。愛娘にささげるド派手な祝砲を放ち、格好良すぎるダディーが神宮で大暴れした。

 1回は2死一塁で左翼席へ2ラン。「追い込まれていたけど、高めに浮いてきた変化球をしっかりつかまえられた」。2試合連続猛打賞で4試合連続の打点となった。開幕8戦目で3本目のアーチ。今季は安打に加え、ポイントゲッターとしても大活躍の予感だ。

 ただ、試合は虎の「マー」が大暴れしても、また投壊した。2桁得点しての黒星は8年ぶり。普段は冷静な和田監督も、短く切り上げた。「ここんとこずっとだからね。どんな試合にしても、いっぱいいっぱい」。今季8試合中7度目の2桁被安打19安打を浴びて、チーム防御率は再び7点台。昨季16勝7敗1分けの「お得意様」に、ダメージ大の連敗となった。