<日本ハム7-5中日>◇20日◇札幌ドーム

 交流戦開幕の主役を奪った!

 プロ3年目の日本ハム石川慎吾外野手(21)が、プロ初本塁打となる代打決勝2ランで勝利に導いた。同点に追いついた7回2死二塁、中日パヤノの直球を本拠地のバックスクリーンに打ち込んだ。先発大谷の乱調で6回に逆転を許す苦しい展開だったが、プロ初の長打が値千金の一撃となり、交流戦白星スタートを呼び込んだ。

 迷いなく振り切った。石川慎は、決めていた。「男は黙って初球から」。打球はグングン伸びた。バックスクリーンに勢いよく飛び込んだ。プロ1号が決勝2ラン。大谷でも、中田でもない。交流戦の開幕戦で主役を奪った。何度もガッツポーズを繰り出した。8回に右翼の守備へ向かうと、大歓声で出迎えられた。「自分が打ったときよりも、鳥肌が立ちました」。初体験の心地よさだった。

 ふがいないミスを取り返した。17、18日のロッテ戦。ともに代打で出場し、見逃し三振だった。「振らないとダメです」。自分を責め、反省し、次へ視線を向けていた。「札幌ドームでの交流戦はDHがないですから。チャンスは、もっと来ると思う」。投手の打順で代打出場の機会が増えるはず-。読み通りだった。7回、石井の代打として出番は来た。「使ってくれる首脳陣の皆さんに恩返しができたら」。最高の結果で、期待に応えた。

 今季は明確な目標を掲げた。「1軍定着」「1軍で80試合出場」。手応えもあった。2月の春季キャンプは1軍スタート。3年目で初だった。気合十分も、キャンプ中の実戦で思うような結果は残らなかった。「このままじゃ、2軍と一緒に帰ってしまいますね…」。本人の予想通り、同21日の2軍本隊の打ち上げとともに、降格が決定した。

 腐らなかった。逆に奮起した。2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷で、バットを振り続けた。結果を追い求めた。小田2軍打撃コーチも「こっちが止めないといけないくらい練習していた」と振り返る。昨季は英才教育も施された。2軍戦では主に4番起用。西2軍監督は「責任感を持ってもらいたかった。チームのために何ができるか」と意図を説明する。長打力があり、将来の打線の軸となる可能性を秘める。主力へ成長するため、自覚を促した。「打点や得点圏打率を重視しています」。培ってきた思考が、大舞台で発揮された。

 栗山監督も感極まった。「見事だったよね。ああいう姿を見ているとね…」。見逃し三振の悔しさを、ぶつけてくれると信じていた。「あれが、あったからでしょ」と指揮官も代打起用に迷いはなかった。昨年の1月には、同じ外野手でオフの自主トレもともにした糸井がオリックスへトレード移籍。涙を流して別れを惜しんだという21歳の好青年が、大仕事をやってのけた。「1歩踏み出せたと思う」。上沢、近藤と同期の高卒3年目。フレッシュなヒーローの誕生で、交流戦は最高の形でスタートを切った。【木下大輔】