<阪神8-2広島>◇12日◇甲子園

 踏ん張りどころじゃ!

 完敗の中、甲子園で広島は熱くなった。5回、菊池涼介内野手(24)が阪神藤浪から死球を受けるとベンチから首脳陣が飛び出し、一触即発のムードに。主力への厳しい攻めに怒りを示した。首位巨人に5ゲーム差と開いたが、逆転優勝、最低でも地元でのクライマックス・シリーズ開催へ、負けられない戦いは続く。

 5回2死無走者で打席に立った菊池を阪神藤浪の148キロ直球が襲った。ドボッと音が聞こえそうな勢いで左脇腹を直撃。菊池はたまらず、うずくまった。

 駆け寄った野村謙二郎監督(47)、トレーナーらが菊池を見守る中、緒方孝市野手総合コーチ(45)が怒りの表情で阪神ベンチをにらみつけた。これに阪神ベンチからは和田監督、中西投手コーチが反応。乱闘にこそ発展しなかったものの一触即発のムード。たまらず審判団は警告試合を宣告した。

 伏線はあった。制球の定まらない広島福井が4回に阪神マートンに死球を与えた。これもあり、福井は一気に6失点で逆転を許してしまった。直後の広島の攻撃で菊池が受けた死球だけに雰囲気が怪しくなった。

 「痛みはありません。当たったのは左脇腹。大丈夫。頑張りますよ」。試合途中で大事を取って交代した菊池だがバスに乗り込む際には元気に話した。騒動の際は険しい表情だった緒方コーチも「明らかに厳しい球が続いていた。それで当たったから出ていった」と冷静に振り返った。

 熱くならざるを得ない試合だった。3位阪神との直接対決で引導を渡すべく乗り込んだ甲子園。だが6連敗から抜け出そうとするライバル阪神も必死だ。打倒巨人は共通項だが、この3連戦はお互いの意地がぶつかる最大の局面だ。

 「ここに来てこういうことをしていてはいけない。打つ方も投げる方も。してはいけない試合をしてしまった。ここからは張り切ってやってもらわないと」。野村監督は独特の言い回しで選手の奮起を願った。

 阪神3連戦が終われば地元マツダスタジアムで巨人を迎え、最後の3連戦が行われる。さらに現時点で10月5日の今季最終戦も巨人が相手。最後まで何が起こるか分からない状況にするためにも、目の前の1試合が重要なのだ。【編集委員・高原寿夫】