<西武11-2楽天>◇14日◇西武ドーム

 日本球界史上で最長身選手がデビューした。オランダ出身、216センチの楽天ルーク・ファンミル投手(30)に潜入する。

 のっぽな右腕は温厚で、優しい。8回、初の1軍マウンドに上がる直前に緊張は頂点に達した。テスト生で参加した春季キャンプから育成選手を経て、たどり着いた場所。かみしめるはずが、長い足でブルペンから走りだすとあっという間にマウンドにたどり着いた。「日本のマウンドに慣れるために下でやってきた」と、戦いのゴングが鳴ると表情は一変。水を得た魚のように暴れた。

 ジャイアント馬場さんの16文(40センチ)キックより強烈な、「86文」の長身を利した本格派スタイルで西武打線をなぎ倒した。鬼崎、浅村を7球で仕留め、3人目で迎えたのは本塁打王を争う中村。カウント2-2からこの日最速152キロの必殺技ストレートで決めた。遊ゴロで3カウントならぬ3アウトを奪うと、右翼スタンドの楽天ファンから歓喜の足踏みが聞こえた。「真っすぐがゾーンに集まった」と照れくさそうに振り返った。

 マウンドを下りると、ナイスガイに戻る。趣味は散歩。仙台の町を歩き、日本語を学ぶ。教師はスマホと看板だ。目に留まった文字をスマホになぞり、辞書で検索。オランダ語、ドイツ語、英語、ギリシャ語、スペイン語を操る秀才が本気を出すと、カタカナは3日で習得できた。日本語の発音も練習中で、この日も西武ドームの看板で自主練習。「セイブグループ、フィナンシャルグループ、…ススム」。一番目立つ「ご飯がススム」の漢字はまだ読めない。

 興味は自分より高いもの。「オフに行こうと思う」と日本最高峰の富士山に憧れを抱く。この時期の初登板は来季契約のテストを兼ねていると理解している。だからこそ上々の内容にも「NPBで一番身長の高い選手であり続けることが目標」と気を緩めない。今季の推定年俸は1200万円。でっかいファイトマネーをつかむため、日本での武者修行は続く。【島根純】

 ◆ルーク・ファンミル

 1984年9月15日生まれ、オランダ出身。05年までオランダで野球を続け、06年から米ツインズ傘下でプレー。その後エンゼルス、インディアンス、レッズの傘下でプレー。主に中継ぎ、抑えを務めた。メジャー経験なし。13年WBCオランダ代表で、同年秋にソフトバンクのテストを受けるも不合格となった。216センチ、120キロ。右投げ右打ち。