先手必勝が日本一へのシナリオ。29年ぶりの日本シリーズ制覇に向け、阪神が甲子園で全体練習を再開した。相手はパ・リーグ王者ソフトバンクに決まり、和田豊監督(52)が25日から甲子園で戦うシリーズ初戦と第2戦の重要性を強調。すでに開幕投手は通達済みであることも明かした。大黒柱メッセンジャーで先手を取る青写真を描いているはずだ。

 東京ドームでのCS制覇から中2日、本拠地甲子園で猛虎が再始動した。日本シリーズへの第1歩。引き締まった表情で選手たちの動きを見守った和田監督は確信を得たという。

 「今日は慣らし運転のつもりだったが、心地のいい緊張感、引き締まった練習ができた。よしいける、という気持ちになった。本当に初戦が重要という気持ちで準備したい」

 戦闘モードに入った指揮官が挙げたポイントは「先手必勝」だ。85年には新人内野手として日本一を経験。03年、05年は打撃コーチとして敗北を味わった。85年は2連勝スタートも、03、05年は逆に2連敗発進。短期決戦の絶対的な法則を肝に銘じていた。

 「打線は全員が打率トップ10に入るくらいの破壊力だから。球場の大小関係なくスタンドに入れられる。打ち合いにしたらいけない。最少失点に抑えながら、接戦に持ち込むという戦い方になるだろう。初戦で流れを持ってこられるように」

 ソフトバンク打線の怖さは4戦合計で21失点した今季のセ・パ交流戦で思い知らされた。だが、和田阪神には本拠地開幕というアドバンテージがある。広い甲子園で相手を封じて先手を取る。それが描く青写真だ。最も重要といえる初戦の先発はすでに本人に告げているという。

 「もちろん、もちろん。伝えています。甲子園に強い投手?

 うん…。でも、全員強いだろう」

 最後は笑顔でごまかした。だが、初戦を託すのはシーズン通して大黒柱となったこの男以外には見当たらない。リーグ最多イニングを投げ、最多勝、奪三振王の2冠を獲得したメッセンジャーの先発が濃厚だ。甲子園では6勝を挙げ、防御率2・29。広い本拠地をバックに強力打線にもパワー勝負を挑めるエースだ。

 指揮官にとって11年ぶりリベンジの舞台でもある。ホークスには打撃コーチだった03年の日本シリーズで敗れた。

 「鮮明に覚えている。本拠地でしか勝てなかった。とにかく初戦で流れを引き寄せて。秋山監督は同い年だし、現役もかぶっている。スーパースターで3拍子そろっていた。監督としても経験がある。チャレンジャーとしてぶつかりたい」

 相手の力を認めながらも悲愴(ひそう)感はまったくない。勝利のイメージは和田監督の頭の中に確かにある。【鈴木忠平】

 ▼過去64度の日本シリーズで先勝したチームは40度優勝しておりV確率は65%。初戦敗退から優勝したケースは22度(第1戦引き分けは2度あり)。同シリーズ5度出場の阪神が先勝したケースは62、85年の2度あるが優勝したのは85年の1度だけ。昨年までのCSでは4度とも初戦に敗れ、ステージ敗退している。