阪神は20日、高知・安芸秋季キャンプを打ち上げ、和田豊監督(52)が4年目の中谷将大外野手(21)を「守備MVP」で高評価した。シートノックでは矢のような送球を連発。パンチ力のある打撃が売りだったが、意外にも守備で注目された。海外FA宣言した鳥谷がメジャー移籍すれば、中堅大和が遊撃にコンバートされる方向。外野枠が1つ空けば、センター候補として面白い存在になる。

 快晴の安芸に真っすぐの白い糸を引いた。午前のシートノック。中堅の守備位置についた中谷が捕球から送球動作に入り、ブルンと右腕を振るうと、白球はグングンと捕手をめがけて突き進む。力強く、一直線の軌道が成長の証しだ。躍動感のある身のこなしに、和田監督もくぎ付けになった。

 キャンプを終え、いまや恒例となったMVPに関する質問に答える。まずは猛打の「陽川」の名前が口を突く。その直後だった。自ら切り出すように「春から比べて、中谷は十分、1軍枠に入ってくるくらいの守備力がついている」と名指しした。長打力が魅力のホープが、意外にもディフェンスで高評価を受けた。総決算の「守備MVP」は努力のたまものだった。

 山脇外野守備走塁コーチは「スローイングがとても良くなった。彼の場合、1歩目とか1球目とか、最初の反応が弱い。その反応が良くなってきた。沖縄でのオープン戦でポカをやって1つの契機になった。守備では1軍で争える」と説明する。

 正確なスローイングを必死にマスターした。手足は長く、まるで、かつての新庄のような動きっぷりだ。くしくも昨秋キャンプでは掛布DCに「小新庄」のニックネームをつけられていた。彗星(すいせい)のごとくスターダムを駆け上がった、守備の名手をほうふつさせる身のこなしなのだ。守備の成長は評価されたが、和田監督はさらに注文する。

 「1軍の枠に入ってくるには、もう1つ何か作らないとね。もう1つ作ると1軍が見えてくると思う。打撃も紅白戦でセンター中心に結果が出ている。この打撃で打率2割はないというものを見せてくれている」

 今季、2軍戦で打率1割9分、7本塁打。課題の打撃で成長すれば、1軍も夢ではない。鳥谷がメジャー移籍すれば、大和が遊撃にコンバート。おのずと外野が1枠空き、千載一遇のチャンスが訪れる。中谷は言う。「守備で評価してもらえてうれしいけど、打たないと意味がない」。その心意気だ。次代の主砲候補が1軍の門をこじ開けようとしている。【酒井俊作】

 ◆中谷将大(なかたに・まさひろ)1993年(平5)1月5日、福岡県生まれ。福岡工大城東から10年ドラフト3位で阪神入団。打力を生かすため、捕手から外野手に転向。12年に1軍戦6試合に出場も、10打席ノーヒット。今季ウエスタン・リーグ93試合、52安打、7本塁打、30打点、打率1割9分。187センチ、84キロ。右投げ右打ち。