運命的な再会に胸を躍らせた。広島市内にあるジム「アスリート」で5日、広島に復帰した新井貴浩内野手(37)が自主トレを公開した。涙のFA移籍から丸7年がたった。同じ07年オフに広島から海を渡った黒田博樹投手(39)も、今季から広島に復帰することが決まった。8年ぶりに実現する再タッグに、早くも気持ちを高ぶらせている。

 何かに導かれるように、再び同じ赤いユニホームに袖を通すことになった。ただ、当時とは違うものがある。立ち位置だ。それを誰よりも認識しているのは、新井本人だった。

 「立場が違うのは分かっている。僕がどれだけやれるか。(黒田とともに当時と同じ活躍ができれば)ドラマのようですが、そこを目標に頑張りたい」

 くしくも同じ07年オフ、4番を張っていた新井は阪神に移籍し、エースだった黒田は海を渡った。あれから7年が過ぎた。その2人が今季、再会を果たす。

 08年から2人が歩んだ道のりは全く異なる。夢を追った黒田は、米国でも広島時代と変わらぬ投球で5年連続2桁勝利を記録。世界を代表する右腕に、広島ファンも温かい声援を送り続けた。一方でライバル球団に移籍した新井には厳しいヤジが飛んだ。昨季94試合の出場に終わり自由契約となって広島に戻ってきた新井に対し、黒田は高額年俸提示を蹴って復帰。それぞれの道程を経て、再び2人の道が重なり合う。

 今季の年俸はチーム最高額の4億円の黒田に対し、新井は2000万円。当時と同じように先発の柱として期待されている黒田とは違い、堂林や以前三遊間を組んだ梵らと三塁の定位置を争う立場にある。2人の現在地には大きな差が生じている。しかし志を同じくする者として、原点に立ち返り、再び広島のためにプレーする気持ちを強くしている。元日からジムで始動し、肉体改造に励んでいる。「長打は自分の持ち味でもあるので、そこを見せられるようにトレーニングしている」。12年に右肩を痛めるなど度重なるケガで十分なトレーニングができなかったが、平岡洋二アスリート代表が「(筋力が)当時の3割くらいに落ちていたが、ちょっとずつ戻っている」と証言するように力強さを取り戻しつつある。

 再び交錯する2人の物語。「ドラマのような」夢物語の復活劇を演じてみせる。新井は終着地に笑顔でたどりつくことを信じ、最終章のページをめくる。【前原淳】