早大ソフトボール部出身の日本ハム大嶋匠捕手(24)が、2月の春季キャンプで初の1軍スタートが濃厚であることが14日、分かった。異種目からプロ野球に挑戦して苦節4年目での大抜てきとなる。正捕手を争う大野、市川が故障を抱えているなどチーム事情も後押し。「ソフトボーイ」の異名で1年目から話題先行だった左のスラッガー候補が、初めて2月1日を1軍で迎えることになりそうだ。

 ついに壁を破る時が来た。「ソフトボーイ」こと大嶋が、初めて1軍の沖縄・名護で春季キャンプ初日を迎える可能性が高まった。正式決定となれば大卒4年目で初の1軍スタートとなる。プロ入りまで硬式野球経験のなかった異色のキャリアの持ち主。普通の経歴なら遅いかもしれないが、快挙とも言える大抜てきとなりそうだ。

 地道に実力を伸ばしてきた。少年野球の経験はあるが、中学から大学まではソフトボール一筋。初めて触れた硬式球や木のバット、捕手ミットに慣れることからプロ生活は始まった。1年目はイースタン・リーグで3本塁打を放つも打率1割9分9厘だったが、昨季は自身最多となる71試合出場で打率2割4分6厘。着実にレベルアップし、昨年10月5日楽天戦(札幌ドーム)でプロ初出場。代打で三振に終わったが成長を認められ、11月の秋季キャンプメンバーにも選ばれた。

 チームの捕手事情も1軍スタートの大きな後押しになりそうだ。正捕手候補の大野は右肘痛を抱えている。10日に2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷で行われたスタッフ会議では、まだ万全でないことがトレーナー陣から報告されたという。昨季は第2捕手として奮闘した市川は昨年12月に腰を手術。2軍スタートが決定的で、捕手登録の近藤も三塁起用などポジションが流動的。成長を続ける大嶋の1軍入りに大きな追い風が吹いている状況だ。

 今オフも例年同様、鎌ケ谷を拠点に自主トレを行っている。5勤1休をベースにウエートトレーニングや打撃練習に熱を入れる日々だ。「他の捕手に対して、何でアピールするかとなれば打撃だと思う。例年にない手応えはあります」と春季キャンプへ向けて順調な調整を続けている。

 この日も鎌ケ谷で打撃マシンを約2時間、打ち込んだ。「やっぱり、1軍で結果を出したい。秋もキャンプに連れて行ってもらった。春も最初からアピールしたい」と気合がみなぎる。ルーキーイヤーは好奇の目で見られたこともあった。ソフトボール出身という話題先行から、実力が伴ってきた期待の左の長距離砲。苦節の時を経て、晴れの舞台から開幕1軍を目指す。

 ◆日本ハムの捕手事情

 中嶋兼任コーチも含め登録9人。今季29年目の中嶋兼任コーチ以下、大野が7年目、市川、荒張が6年目、大嶋、近藤が4年目、石川亮が2年目と続き、ルーキーの清水、佐藤正が今季から加わる。昨季は大野が捕手陣で最多105試合、移籍1年目だった市川は自身最多71試合に出場。大野は昨シーズン中に右肘を痛め、現在はスロー調整中。市川は昨季終盤から腰痛に苦しみ、昨年12月に腰椎分離症除圧手術および椎間板摘出術を受け、キャンプ2軍スタートの見込み。<大嶋のプロ3年間>

 ◆プロ入り

 11年のドラフト会議で日本ハムから7位指名。硬式野球経験がなく、ソフトボールからのプロ野球入りは極めて異例だった。

 ◆1年目

 12年キャンプは2軍スタートも、最初の紅白戦で1軍に呼ばれ、初打席の初スイングで中堅に本塁打を放った。ただシーズンは1軍昇格はなく、2軍で60試合出場、打率1割9分9厘、3本塁打。

 ◆2年目

 13年3月の交流練習試合(対BCリーグ群馬)でスイングの際、右手有鉤(ゆうこう)骨骨折で出遅れた。2軍出場47試合、打率2割2厘、2本塁打。

 ◆3年目

 14年シーズン最終戦の楽天戦(札幌ドーム)で1軍初昇格。代打で初出場し、松井裕に空振り三振を喫した。2軍では71試合、打率2割4分6厘、1本塁打。