<東都大学野球:亜大2-0日大>◇第1週初日◇4日◇神宮

 亜大の最速152キロ右腕、東浜巨(なお)投手(3年=沖縄尚学)が、大記録を達成した。今季から1部昇格した日大を7安打7奪三振で完封。通算15完封とし、75年~78年に在籍した東洋大・松沼雅之(野球評論家)のリーグ記録に並んだ。チームは09年秋以来4季ぶりとなる開幕戦勝利。

 80周年を迎えた「戦国東都」で、まだ3年生の東浜が6季目にして通算15完封の大記録に到達した。だが最後の打者を中飛に打ち取り、整列に向かった右腕に笑顔はなかった。「最悪ですね。ボールが行かないし、体のキレもない。完封でも反省です。まだ投げたかった」。直球は自己最速に6キロ満たない146キロ、3回からは走者なしでもセットポジションで投球する苦心のマウンドだった。3回まで毎回先頭打者に安打を浴び、生田勉監督(45)も「いつ替えようかと、それくらい調子が悪かった」という。

 オーバーワークで迎えた開幕戦だった。9月に入るまで体を極限まで追い込んでいた。7月上旬、日本代表として出場した日米大学野球から帰国後。代表でコーチも務めた生田監督に東洋大・藤岡、東海大・菅野、明大・野村ら“投手BIG3”との違いのリポート提出を義務付けられた。「悪いなりに抑えられる。調子が悪くてもコンスタントに投球できる。投げる球に力があって、ムラがない」と実感。自身の投球にムラが生じるのは、体力の欠如だと結論づけた。

 全体練習以外でも、早朝1時間のシャドーピッチングや筋力トレーニングを欠かさなかった。8月の約2週間に渡る北海道キャンプでは、投げ込みは1日200球以上。「春の後半がいい感覚だった。それを探りながら投げていた」と、152キロを計測した5月後半の残像を追い求めた結果でもあった。キャンプ後に生田監督から練習量を落とす調整を促されても、フォームや指先の微妙な感触を忘れない思い出そうと、球を手放すことはしなかった。「完璧を目指すと不安になる。野球の難しさ、特に投手は繊細なポジションだと思った」と、自分と戦った夏だった。

 そんな中迎えた秋の初戦で、9つの0を連ねた。無四球完封は初めて。「偉大な先輩に肩を並べたことはうれしいことだし、誇りに思う」と唯一前向きな言葉を、最後に口にした。【清水智彦】