ダルビッシュ直伝の成果が出た。侍ジャパン強化合宿第1クール最終日となった19日、佐々木朗希投手(21)が今合宿初めてブルペン入りし37球。

テーマにしていたスライダーに手応えを得た。合宿初日にアドバイスを受けたダルビッシュ有投手(36)はじめ、他の投手たちが見守る中での投球だった。3月のWBCでは1次ラウンド3戦目、11日のチェコ戦先発が有力。東北出身右腕は「3・11」に世界大会デビューを飾る公算が大きい。

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視線の先、受ける甲斐の後ろにいるあの人は“昨日の自分”だった。佐々木は1人だけでブルペンのマウンドに上がった。その姿を、ダルビッシュをはじめ、戸郷、伊藤、今永、湯浅、宮城たちが見守った。ダルビッシュはスマホで撮影も。前日にダルビッシュの投球を、ほぼ全ての投手陣が見学。佐々木はスマホで撮影をした。そっくり“お返し”された格好だ。「後ろにたくさんいて、緊張したり、力が入ったり」と正直に打ち明けた。

だからかは分からないが「ストレートは指のかかりが良くなかったり、フォークは抜けが良くなかったり」。最速156キロが出た直球は上ずる場面もあった。一方で大きな収穫もあった。「スライダーは良かったと思います」。合宿初日、ダルビッシュからスライダーの握りを教わった。投球練習を終えると、ロッテ監督でもある吉井投手コーチも交え3人で話し込んだ。「(ダルビッシュに)スライダーは良くなっていると言ってもらいました」と、うれしそうに打ち明けた。

実は、佐々木の投球をみんなで見学したのはダルビッシュの提案だった。メイン球場での投内連係後「プレッシャー、かけにいこうよ」と呼びかけた。昨日の今日で、愛ある振る舞い。初見同士も多かったチームの雰囲気は、強化合宿3日目にして、ほぐれている。

佐々木は計37球のうち、3分の1ほどはクイックで投げた。途中でボールを交換したのは「試合になったら新しいボールが来る。慣れるように」。1球1球の差異が大きいWBC使用球を意識。大会本番を見据えながら準備を進め、チェコ戦先発が有力だ。父功太さん、祖父母を津波で亡くした右腕が「3・11」に世界大会デビューへ。「チームのために自分ができることをやるだけ」ときっぱり言った。チェコ戦の後は、4戦目オーストラリア戦先発が有力な山本とともに米国での登板に向かう。勝負の時へ、歩みを止めない。【古川真弥】

▽栗山監督 いろいろ心配事もありますけど、ボールの強さだけがあれば、いろんな修正が利くと思っていた。最初のブルペンは見たかったので、そこは全く問題ない。これからさらに状態が上がると思います。

▽ダルビッシュ すごくいいスライダー。横曲がりが本当に大きくて、本人は違和感なく投げているので自分のものにしてると思う。スピードがあるのはもちろんですけど、やっぱりストライクを取るのに困らない。この前もヤクルト戦に投げたと思うんですけど、春のキャンプにかかわらず、3ボール2ストライクからスプリットを投げたり。なかなかできないことなので、あの年齢でできるのはすごいと思います。

▽甲斐 強い球が来ていた。スライダーは良かったです。何度か対戦しているけど、イメージしていたスライダーよりもはるかに良かった。曲がり方がキュッと一気にブレーキがかかって曲がっていた。こんなすごいスライダーがあるんだと思った。

▽宮城 真っすぐとフォークが良かった。(自分自身に)欲しいです。ボールが違いますけど、強さを感じますし、対応能力もすごい。僕はできないんで、見守っていきます。

▽伊藤 すごくボールが強いし、フォークがすごい。浮かないというか、そのまま加速して落ちていく感じなのですごかった。まねできないですね。

▽湯浅 フォークが(スライダー変化の入った)“フォースラ”みたいだった。すごいっす。