元横綱日馬富士の傷害事件を巡って訴訟を起こした被害者の貴ノ岩が、訴訟を取り下げた10月30日は、千賀ノ浦部屋の稽古始めでもあった。10月1日付で元貴乃花親方(元横綱)の日本相撲協会の退職が決まり、旧貴乃花部屋の消滅と所属力士らの千賀ノ浦部屋への所属先変更も承認された。小結貴景勝は秋巡業参加のため、都内で行われた引っ越し作業には参加せず。千賀ノ浦部屋に合流したのは、秋巡業が終わり福岡入りした10月28日。九州場所(11月11日初日、福岡国際センター)の新番付発表が行われた10月29日は稽古は休みで、30日にようやく初めて、旧貴乃花部屋の力士と千賀ノ浦部屋の力士が全員そろっての稽古が行われた。

印象的だったのは、旧貴乃花部屋の力士らが、積極的にコミュニケーションを取っていたことだ。四股やストレッチで体を温め、すり足が始まった。さまざまな種類のすり足に、旧貴乃花部屋の力士らは、千賀ノ浦部屋の力士の動きを見よう見まねで行った。最初こそぎこちなかったが、慣れてくると余裕がでてきたのか、会話する場面が増え、笑顔が見えた。ぶつかり稽古、申し合い稽古が始まると、自然とアドバイスをする姿に千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)も安堵(あんど)の表情。新弟子に対して、身ぶり手ぶりで四股の踏み方を指導する姿も、すっかり千賀ノ浦部屋にとけ込んでいる印象だった。

“新”千賀ノ浦部屋の稽古始めは、約2時間で終わった。師匠の千賀ノ浦親方は、「これまでは関取が1人しかいなかったから助かります。活気も違う」と、旧貴乃花部屋の3人の関取が若い衆に指導する姿を喜んだ。小結貴景勝も「いい雰囲気で活気がある」と言えば、平幕の隆の勝は「これまで出稽古でやっていたことが毎日部屋でできるのでうれしい」と、こちらも笑顔。旧貴乃花部屋の力士が、千賀ノ浦部屋に所属先変更して1カ月たったが、部屋としては順調な滑り出しのように見えた。【佐々木隆史】