福岡国際センター周辺には「○○関江」などと書かれた多くの幟(のぼり)がはためく。安全面等を考慮、会場周辺に立てられるのは1人(1部屋)1本限りで、関取には“勲章”だ。

作るのは日本相撲協会が承認した業者で、その1つ、慶応2年(1866年)創業の太田旗店(本社・大分市)によると「相撲幟」は後援会、企業や個人から各部屋、関取、行司、床山、呼出らへの贈答品だ。担当者は「昔から決まった型があり、そこに注文を受けた名前を入れます」。幅90センチ×縦540センチの布地に、熟練の職人が約3週間、刷毛染(はけぞめ)という手作業で仕上げる。縁起物だから、1場所ごとに新品に替わる。

関取3場所目で連日場内を沸かせる十両炎鵬(24=宮城野)にも今場所、部屋の後援会による幟が立った。「そうなんですか? どなたからです? 初めてじゃないかな」と喜んだ。

お値段は-。実は意外とお手頃で、相場が1枚数万円らしい。しかも「個人で楽しむ分には、ひいきの関取名でお作りできると思います」(同社担当者)。熱心なファンならレプリカ感覚で…と思ったが、過去に“個人注文”はないとか。何せ5メートル以上だ。いかに酔狂な人でも、そこまではしないか。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)