元関脇出羽の花の出来山親方が、夏場所を最後に日本相撲協会を退職した。5年前に65歳の定年を迎えたが再雇用制度で協会に残り、5月13日に70歳の誕生日を迎えたため、夏場所いっぱいまで勤務していた。約47年間の角界での務めを終えた出来山親方に心境を聞いた。【取材・構成=佐々木一郎】

-長年の勤務を終え、今の心境はいかがですか

出来山親方 気持ち的にすっきりしたというか、何かぼーっと気が抜けたような。解放感に浸っているような感じです。自分としては、やりきった満足感があります

-最近はどうされていますか

出来山親方 先日、新型コロナウイルスのワクチン接種の1回目を終えました。2回目は6月中旬の予定です。国技館がワクチン接種会場になり、協会が墨田区と協力した関係で、区民の皆さんと一緒に受けました。ファイザー製です。当日は痛くもなんともなかったのですが、翌日は少し痛みが出ました。今は大丈夫です

-退職のお祝いの席はありましたか

出来山親方 この状況下ですから、何もしていません。毎日、家飲みですよ。息子が3人、孫は4人いますが、あまり会っていません

-5年前の定年会見では、現役時代の思い出として2横綱(北の湖、若乃花)2大関(琴風、隆の里)を2場所連続で破った1982年(昭和57年)の春場所と夏場所を挙げていました

出来山親方 昭和57年1月に長男が生まれて、子供の顔を見ながら頑張らなきゃと思ってやっていました。三賞もいただき、ものすごく記憶に残っていますね。いい年でした

-日大4年で学生横綱になり、出羽海部屋入門時も大きな話題になりました

出来山親方 入門時は弱かったからね。舛田山と一緒にスタートしたけど、向こうは順調、私は足踏み。十両に上がるまで1年かかり、そこから1年は幕下にも落ちました。いい教訓になっています

-親方は酒豪でも有名でした。鷲羽山、大錦、佐田の海と4人で、1晩で一升瓶を10本空けた逸話も残っています

出来山親方 強いのではなく、好きなんですよ。アルコールが入ると元気になる。今も何でも飲みますが、量は落ちました。1升? そんなに飲んだら死んじゃいますよ。次の日がきつい。今は飲み方を変えました。例えば時間を決めて、6時から8時まで飲んだら終わり。70歳になると、朝がきついんです

-親方は怪力としても有名でした。リンゴを握りつぶせるほどの握力は今は

出来山親方 落ちましたね。50キロくらいかな。昔は100キロくらいあったんですけどね

-今後はどうされますか。後輩へのメッセージはありますか

出来山親方 1年くらいはのんびりしたいです。今は力士の育ち方も違いますし、昔のようなきつい指導はできません。それでも四股、テッポウ、すり足は大事。新しい指導法も考えていかないといけません。しばらく部屋には行きませんが、稽古が見たくなったら、自然と足が向くかもしれませんね。2回目のワクチンを打ったら、孫にも会えるかな