今場所から行司の最高位に昇進した、第39代木村庄之助(63=九重)は、心掛けていることがある。
もともと2年前までは戦後7人目となる、番付表の書き手を約15年間も務めた相撲字の達人。庄之助の襲名を機に、自身の名を添えて、一筆書いてほしいという要求が多くなったという。そんな時に書くのは、1字なら「寿」「福」「和」、2文字なら「希望」や「勇気」などだという。「相撲では忍耐の『忍』などが好まれますが、明るい未来を連想させる言葉を書くようにしています」と説明した。
「家に飾ってもらった時に、縁起の良い言葉の方がいいですから」と続けた。近年、コロナ禍や能登半島地震など、暗い話題も多かっただけに、平穏を願って書いているという。土俵上でも、庄之助として初めて本土俵に立った前日の初日を「余計なことを考えた時点で普通ではなくなる。今まで通りを心掛けた」と振り返った。横綱の取組を合わせたのは、同じ立行司でも式守伊之助を名乗った先場所まではなく、初体験だったが無事に勤め上げた。
唯一、変わったのは軍配の房や装束の菊綴(きくとじ)などの色が、紫白(しはく)から総紫(そうむらさき)となったことのみ。「階級が変わったことを示すもので、身が引き締まった」。庄之助だけが許される高貴な色を誇りに「後輩の見本となるように心掛けたい」と力説。定年までの残り1年9カ月余り、土俵内外の平穏、発展を願い続けていく。【高田文太】


