KO勝利→祈願→日本新記録へ。ボクシングのWBC世界バンタム級王者山中慎介(34=帝拳)が7日、都内のジムで、8月15日に同級1位ルイス・ネリ(メキシコ)を迎える13度目の防衛戦(島津アリーナ京都)の発表会見に臨んだ。世界王座の連続防衛13回の日本記録がかかる大一番。保持者の具志堅用高氏からのメッセージでは更新を期待された。最強挑戦者を倒し、試合の翌16日に行われる京都の夏の風物詩、山に「大」の字などが浮かぶ「五山送り火」にV14を願う。

 映像を見終わった山中が5、6度とうなずいた。「うれしいです。本心で言ってくれているのが伝わるので」。会見中にテレビに映し出されたのは、具志堅氏からの熱いエールだった。

 具志堅 記録があるから、それを塗り替えるのがプロの世界。山中君の今までのボクシングを見たら塗り替えるよ。塗り替えてほしいね、ボクシング界のために。

 日本記録の13回に話は終わらない。新記録を確信、期待する声に一層気が引き締まった。まずは「ネリを倒して『並びました』と目の前で報告したい」。

 23戦全勝(17KO)のネリを、「防衛戦の中でも一番強い」と認める。ガードが下げ気味なのは高いディフェンス能力の自信の裏返しで、攻撃では強烈に多彩に拳を振るサウスポー。ただ、数々のKOを演出してきた絶対王者は、「決して当たらないイメージはない」。「神の左」を「どこかで当てる自信はある」。その時は必然、KO劇で締めくくってみせる。

 具志堅氏の「予言」に沿うわけではないが、今回は試合翌日のプランもある。16日は京都の夏を彩る「五山送り火」の開催日。南京都高(現京都広学館高)時代を過ごした土地だが、「1度も見たことない。(試合に勝って)笑って見たい」と楽しみにする。燃やされる護摩木には無病息災などを願うのが習わし。日本新記録がかかるV14祈願にはうってつけだ。

 「始めたときは世界チャンピオンになるのが目標だったから想像以上のところまできた。自分でも誇りに思いますね」。想像を超える未来には、まだまだ先がある。【阿部健吾】