WBC世界バンタム級王者の山中慎介(34=帝拳)が金字塔を前にして散った。挑戦者で同級1位ルイス・ネリ(22=メキシコ)に4回2分29秒、TKO負けでプロ初黒星を喫した。

<大橋秀行・ピンポイント>

 ハイレベルな試合で緊張感もあった。ネリも評判通りに強かった。日本記録がかかった試合で、山中はもっと楽な相手を選ぶこともできた。それが最強挑戦者と言われたネリを選んだ。偉大な具志堅さんに敬意を表した選択。そこに名門帝拳ジムの心意気を感じ、一番感動させられた。

 山中も力は出し切ったし、負けっぷりにも感動した。今までにないいい出だしで、調子がよかった。上体もよく動いていて、右ジャブもよく、スピードもあった。いつもと違った。左ストレートも強烈なのが入っていた。2回からも左が決まっていた。普通なら倒れている。ネリが強かった。

 最近は危ない場面もあって「もっと右フックを使え」という声が多かった。そうした声でスランプ気味なところがあったと思う。この試合はジャブを突いての左にかけていた。左オンリー。山中の本来の姿での戦いを見せてくれた。

 ストップは早かったが、今までの耐久力の判断もあったのだろう。V13を抜けると思っていたし、抜いてほしかった。帝拳ジムの心意気を見習って、いずれは(井上)尚弥にV13を抜かせてみせます。(元WBA、WBCミニマム級王者)