“目力”見せます-。ボクシングのロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級1位村田諒太(31=帝拳)は18日、同級タイトルマッチを含むトリプル世界戦(22日、両国国技館)の都内での予備検診を受診。5月の王座決定戦で物議を醸す判定で敗れた王者アッサン・エンダム(フランス)と直接再戦へ、目の力を鍛えるビジョントレーニング効果を口にした。

 

 村田には緊張しているかいないかが、目の感覚で分かる。「緊張していると目が固まるので、そのあたりの自分の判断基準にはなっているかな」。エンダムと8月の対戦発表会見以来の対面を果たしたこの日は…。「『ハーイ』くらいですかね。ここまできてピリってもしょうがない」。互いに肩を抱き合うなど、柔らかな言動。目は「固まって」いなかったのだろう。気負い、重圧から離れた笑みも目立った。

 2年前から「ビジョントレーニング」を導入した。光る点を指でタッチしていく器具を使う。3月には約100万円の装置を自宅にも設置して、目を鍛えてきた。反射神経向上などを主眼にしたが、思わぬ効能は精神面にあった。「機械をばばっと押していく時に、力みがあるとできない。力んでいるか、ないかが(感覚的に)分かる」。緊張すれば力む。自分の状態を客観視できるようになったという。「判断材料にしてます」と指標を手にした。

 検診では5月の第1戦から左目の視力が1・0から2・0に変わったが、「トレーニングは視力を上げるためではないんで…」と苦笑。視力が良い方が強いとも一概に言えない。数値は気にしたことはなく、ここでも自然体を感じさせた。エンダムの印象は8月と比較し、「あの時と違ってニコニコしている感じではなく、緊張感も伝わってくる」と見定めた。武器は堅いブロック、右拳だけではない。その目も駆使して雪辱を果たす。【阿部健吾】