オカダが聖地に金の雨を降らせた。メインで行われたIWGPヘビー級選手戦で、挑戦者オカダ・カズチカ(31)が王者ジェイ・ホワイト(26)に勝利。10カ月ぶり5度目の王者に返り咲くとともに、団体初の米殿堂大会で日本のプロレスの力を示した。

最高のプロレスを世界に見せて王者になる。そう宣言していた通り、オカダがホワイトとの死闘を制し、10カ月ぶりにベルトを手にした。1万6000人のファンがオカダの金の雨に歓喜する。その光景は格別だった。「あの景色を見られるのは限られた人間。日本のプロレスの力を見せることができた。胸を張って日本に帰りたい」と喜びをかみしめた。

相手は2連敗している絶対的ヒールのホワイト。米国であるにもかかわらず、オカダコールが会場を包むホーム状態。だが、敵はしぶとかった。レインメーカーを完璧に決めても返された。お互いふらふらとなる中、打点の高いドロップキックを決め、レインメーカーを2連発。立ち上がる相手を墓石式脳天くい打ちでマットにたたきつけ、だめ押しのレインメーカーで勝負を決めた。「本当に強かった。これから何回も戦う相手になる」と好勝負したホワイトをたたえた。

昨年6月、それまで約2年年保持したベルトを失うと、状況はがらっと変わった。「取材が減った。そういう意味では、チャンピオンって忙しいんだなとあらためて思った。前はオフはなかった。試合の間隔が短かった。忙しくて、気が狂いそうになったほどだった」。

だが、その変化をオカダは楽しんだ。それまでは、わずかな暇も惜しんで自分の試合だけでなく、他人の試合や過去の試合をチェック。一日中プロレスのことを考えていたが、「あんまり考えなくなりました」。練習を充実させるのはもちろん、ゲーム、釣りなど趣味に時間を使うようになり、心に余裕ができた。風船を持って登場したり、髪を赤色に染めるなどファンを困惑させるような行動も、新たな自分の姿を探すためだった。「チャンピオンのままやっていたら、何も変わらなかった。今のところにはいない。もっと低いところにいたと思う」。今、オカダは喜怒哀楽をリングで目いっぱい表現する。無冠の10カ月間は、オカダをさらに強く、魅力的に変えるために必要な時間だった。「V12を達成したオカダも強くてかっこよかったと思いますが、このマディソンスクエアガーデン(大会)を成功させたオカダもまた強くて、違うかっこ良さ。自信もにじみ出てくると思う。チャンピオンのオカダ・カズチカがどうなるか楽しみにしてもらいたい」。世界のプロレス史に残る4・6、新たなオカダ時代が始まった。【高場泉穂】