スポーツがある日常が少しずつ戻ってきた。新型コロナウイルス感染拡大に伴う活動制限も緩和傾向。「密」を避ける、道具の共用禁止、少人数での練習などスポーツ界も動き始めた。国内競技団体(NF)を軸に、各競技が活動再開の指針を独自で制定。「スポーツ再開への道~ガイドラインあれこれ~」と題し連載する。感染防止に留意しながら、その競技ならではの問題に苦心する各NFの今を追った。第5回はボクシング。

  ◇   ◇   ◇  

ボクシングでは付き物の減量。コロナ明けには、以前の「当たり前」にも変化が起きそうだ。日本連盟が作成したガイドラインには「減量は、感染症に対する抵抗力を低下させる恐れがあるため、負担の大きい無理な減量は行わない」との一文が明記された。

かねて、連盟の指針として過度な体重調整には警鐘を鳴らしてきた。2キロ、4キロ、6キロと減り幅が増えるにつれ、筋力が弱まる結果を周知することで、指導者に対策を促してきた。特に階級区分の団体戦で行われる学校のリーグ戦では、適性選手がいない階級に、大幅な体重減を強いて出場させるケースもあった。連盟の菊池浩吉副会長は「そつなく選手を置こうとすると、無理が出てくる。今後は考えていかないといけない」と説く。

もう1つ、アマチュアボクシングで見慣れた景色が変わりそうなのは、1分間のインターバルだ。3分間のラウンドを終え、イスに座る選手の目の前で、「スパンッ! スパンッ!」とセコンドがタオルを振る姿。これは水を含んだタオルを勢いよく振り、霧を作って冷却を図る作戦で、振り方こそ違えど、指導者の腕の見せどころだった。

「実は『導入したのは先生ですよ』と言われるんです」と話す同副会長も、日章学園高で教え子たちにタオルを振ってきた。涼風で回復を促してきた「当たり前」も、変わらざるを得ない。【阿部健吾】