強さを世界に見せつけた。WBA、IBFバンタム級統一王者井上尚弥(27=大橋)が挑戦者のWBA2位、IBF4位のモロニーに7回2分59秒KO勝ちし、「聖地」、ラスベガスで完勝デビューを果たした。

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徐々にパワーの差が出て、井上が計算した通りに倒した。左の使い方がうまい。プレッシャーをかけ、追いかけていく。7回はトリッキーな動きも見せ、モロニーが詰まってジャブを出した。そこへ狙ったカウンターを決めた。理想的だった。

モロニーは何でもできる、いい選手。接近戦でしつこいボクサーでガードがよかった。それも井上のパワーの前に、しつこさを出せなかった。モロニーが動いて、ガードも高く、前半は当てづらかった。井上はいろいろ試しながら、作戦もカウンターに変えた。6回のダウンもガードの隙間にうまく打ち込んだ。やっていることはシンプルで、基本がしっかりしている。左ジャブを突き、接近戦はアッパーにボディー。ボクサーを目指す子供たちにはいい教科書になる。

今後も見据えると、バンタム級が合っていて強い。カシメロは相手として一番やりづらい。パンチ力があり、軌道が読めないところがある。怖さはあるが、井上がさばいてカウンターで圧倒すると思う。さらに複数階級制覇の期待があり、スーパーバンタム級なら今でもいける。それ以上となると、その階級が最も合っている選手とはサイズ、パワーや間合いの違いが出てくる。まずはバンタム級を完全制覇してほしい。

今年は1試合だけだが年収1億円とはすごい。すごい“時給”でうらやましい。もっともっと稼いで、ボクシングのすごさ、素晴らしさをアピールしてほしい。(元WBC世界スーパーフライ級王者)