神の領域に到達して獲得したベルトを、簡単には手放さなかった。IWGPヘビー級、同インターコンチネンタル2冠王者の飯伏幸太(38)が、SANADA(33)の挑戦を退け、2度目の防衛に成功した。

やられたら同じ技でやり返すという意地のぶつかり合いが続く中、前後から2発のカミゴェでも仕留められなかった飯伏は、終盤右膝のサポーターを外して気合を注入。正面から再ヒットさせて勝利し「広島最高!」と声高らかに叫んだ。

多くを語らないSANADAだが、その思いは分かっていた。1月5日の初防衛後、スーツ姿で身なりを正し「ギフトを受け取っていただけますか」と要求された。リング上でも挑発せず、うなずき合うだけにとどめた。実力を認めるだけに、リング上で闘志を前面に出し、SANADAも持っている技をぶつけて応えた。

試合後には1月に2冠を奪った内藤からインターコンチネンタルのベルトのみの挑戦を受けた。以前から飯伏の掲げていた2冠統一に反対だったと挑戦理由を明かされた。飯伏は「誰とでもやる。挑戦者は選ばない」と快諾した上で「2つとも思い入れがある。1つにすることで価値が上がる」と考えは曲げなかった。どんな相手が来ようとも、2冠統一を実現するまで2つのベルトを守り続ける。

38歳だが、食事に気を使い、トレーニングやケアに時間を割き、ケガをしない体作りが、力強いパフォーマンスを生んでいる。「1つのシリーズを休んでしまうと、チャンピオンのベルトをファンが見ることができない」。カロリーなど自ら計算して摂取量を調整。「見た目が明らかに5年前と違う」と鍛え上げられた肉体に自信を持つ。

神の領域に達し、21年最高のスタートを切った。狙うはオカダの記録を抜く防衛13回。さらなる高みを目指す飯伏の挑戦はまだ始まったばかりだ。【松熊洋介】