19年に右足を切断した谷津嘉章(64)が、義足を装着して再デビューを果たした。15人によるバトルロイヤルに1番手で入場。「2年前には想像もつかなかった。受け入れてもらえてよかった。支えてくれた人に感謝」と喜びを語った。

2年前の6月、糖尿病の悪化により右下腿(かたい)部を切断。「当時はどうしていいか、迷いや暗い中だった」。周囲の支えにより、義足でのプロレスラーとして再出発することを決断。「特別扱いされないように。リスクもあるが、気にしながらやっているのは俺じゃないみたい」と全力でぶつかる。義足が“凶器”になることもあり「手加減など分からず、ちゅうちょしたところもあった」と苦労を明かす。

もちろん、リングに上がる以上は勝負にもこだわる。ショルダータックルや、フロントスープレックスで投げるなど、見せ場を作るも途中で3カウントを奪われ脱落。「結果は満足していない。まだ手探りの状態だが、次につながるものが見いだせた」と次戦への意欲を見せた。

レスリング日本代表としてメダルを期待されながら、80年モスクワオリンピック(五輪)では日本のボイコットで夢絶たれ、その後プロレスに転向。東京五輪を盛り上げようと、胸には8本の輪が描かれたTシャツを着ている。「五輪マークは使えなくて。だったら名前が谷津だし、8つでもいいのかなと」と笑みを浮かべた。

レスリングでもプロレスでもどん底を味わったが、またリングに戻ってきた。「最大限に使うことが自分の使命だと思う。可能性がある限り、挑戦を続ける」。再スタートを切った64歳「義足レスラー」谷津が、リング上から再び、勇気と元気を届ける。【松熊洋介】