前王者で同級1位寺地拳四朗(30=BMB)が、ベルトを取り戻した。王者矢吹正道(29=緑)とのダイレクトリマッチで3回KO勝ちした。

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★大橋秀行の目

寺地のフィニッシュパンチは非常に高度なテクニックだった。矢吹が左ジャブを放った直後、寺地が左アッパーを打つしぐさでフェイントをかけた。思わず避けた矢吹の顔面が戻ってきたところを再び右で狙い打ちした。

矢吹の癖を研究し、読み切ったカウンター気味のパンチとなった。相手の拳から目を離した上、ワンテンポ遅れてきた右は、矢吹も想定できていなかっただろう。相当効いていたはずだ。

試合前、リングに上がった両者の仕上がりの良い肉体を見て、序盤の決着はないと予想していた。寺地が距離を保つスタイルを変え、前に出てプレッシャーをかけており、一抹の不安も感じた。

一方の矢吹はロープ際に追い込まれていたものの、落ち着き払って左を返していた。その姿は、不気味にさえ感じた。終盤まで激しい攻防が続くと想像していただけに、今回の寺地の倒し方は「年間最高試合」クラスと言っていい。

距離を詰めて倒し切ったファイター型も、寺地の新たな引き出しになった。王座統一戦や、複数階級制覇などの選択肢もあるだろうが、仕切り直してライトフライ級で14度防衛という日本新を狙ってほしい。

まだ4~5年は世界王者として記録達成できるチャンスは十分にある。そして何より1勝1敗となった矢吹との3度目対決という決着戦も見たい。(元WBA、WBC世界ミニマム級王者)